日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
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54 巻, 2 号
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  • 小野 慶一
    1993 年 54 巻 2 号 p. 269-286
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 吉田 順一, 長田 孝義, 山崎 定次, 北原 靖久
    1993 年 54 巻 2 号 p. 287-293
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当院における多剤耐性の黄色ブドウ球菌の検出動向とそれによる感染症を検討した.対象は1985~90年の入院と外来患者の資料であり,多剤耐性黄色ブドウ球菌は4系統以上の抗生剤に耐性の菌と定義した.感受性様式,生化学型と検出日から院内感染を推察した.
    全保菌者の80%が一般外科 (A) 病棟と専門外科 (B) 病棟に在院した.院内伝播例は, A病棟内で4組,隣接するB病棟内で9組あり,両病棟を交叉して6組あった.伝播経路としては,痰で排菌された後の拡散が疑われた. 2病棟で菌検出までの抗生物質投与日数は同等 (p>0.05) であったが,第3世代セフェム系剤の使用量がB病棟できわだって (p<0.01) 多かった.死亡例では,感性の残っている薬剤投与にて腎不全を生じた患者があった.
    以上より,広域スペクトラムの抗生剤の使用に注意して菌発生を未然に防ぎ,痰に保菌する患者は蔓延を予防することが望ましい.
  • Elastica van Gieson染色を併用して
    加藤 孝男, 木村 恒人, 村木 博, 神尾 孝子, 藤井 昭芳, 山本 和子, 浜野 恭一, 相羽 元彦, 河上 牧夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 294-301
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性乳癌124例を対象とし,第VIII因子関連抗原染色にElastica van Gieson (El. v. G.) 染色を併用して乳癌の血管侵襲を検索した.全症例のv (+) は43.5%であり, v (+) 例の10生率は48.1%と不良であった.一方v (-) 例の10生率は75.7%と良好であった (p<0.002). 乳頭腺管癌のv (+) は23.3%であり,充実腺管癌の49.0%, 硬癌の56.7%に比べ有意に低かった (p<0.03, p<0.01). 乳頭腺管癌でもv (+) の10生率は42.9%で, v (-) 例の91.3%に比べ予後不良となった (p<0.006). n (-) 例のv (+) は29.7%であったが, n (+) 例では58.3%と高く有意差が認められた (p<0.002). n (-) 例でもv (+) の10生率は63.2%で, v (-) 例の93.3%に比べ予後不良となった (p<0.003). 血管侵襲はn (-)例のhigh risk factorの一つであると考えられた.第VIII因子関連抗原染色にEl. v. G. 染色を併用した方法は血管侵襲の検索に有用であり,血管侵襲は重要な予後因子になることが示唆された.
  • 杉山 和義, 八木 義弘
    1993 年 54 巻 2 号 p. 302-312
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    新しい腫瘍マーカーBCA225の基礎的・臨床的検討を行った.健常者のBCA225値は対数正規分布を呈したので,特異度が94.0%,感度が72.5%となる160U/mlをカットオフ値とした.臨床的効果に関して,原発乳癌の術後病期ではstage Iで6.2%, stage IIで24.1%, stage III・IVで29.4%,再発乳癌では66.7%と病勢を反映し,陽性率が上昇する結果が得られた.同時に検討したCA15-3やCEAと比較しても同等以上の陽性率が得られた.さらにCombination assayを施行することによりより高い陽性率が得られた.特に再発乳癌においては, BCA225 and/or CA15-3 and/or CEAで77.8%の結果が得られた.再発臓器特異性に乏しいものの再発乳癌に対する高い感度を生かした乳癌術後のFollow-upや治療効果の判定などに臨床的意義が考えられた. BCA225が認識する抗原は乳腺細胞における乳汁産生機能と深い関わりを持ち乳腺の癌化にともなって発現する糖蛋白であると考えられた.
  • 山城 元敏, 井上 恒一, 久米 誠人, 賀嶋 俊隆, 横川 秀男, 高場 利博
    1993 年 54 巻 2 号 p. 313-320
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    冠動脈外血流が多いとされる大動脈弁疾患を含む連合弁膜症 (I群)と冠動脈外血流の少ないとされる僧帽弁膜症 (II群)の手術において,術中および術後早期の心機能の回復をmultidose cardioplegia (CP) の投与間隔から3群に分けて検討した. I群のCP投与間隔が短い群は術後心機能回復において長い群より不良であった. II群ではCP投与間隔が短い群が良好であった.冠動脈外血行はCP液のwash outや心筋温を上昇させる不利益な点もあるが,同時に血液が酸素や物質を供給し,また代謝産物をwash outする心筋保護上有利な面もある.本研究の結果から冠動脈外血行の少ない疾患ではCP間隔は短い方が良好な心筋保護効果が認められた.冠動脈外血行の多い疾患ではその存在が心筋保護の面からは不利ではなく,むしろ有利に働いたと考えられた.
  • 大下 裕夫, 田中 千凱, 種村 廣巳
    1993 年 54 巻 2 号 p. 321-325
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃低分化腺癌の生物学的特性を明らかにするため,組織型から充実型 (51例)と非充実型 (200例)に亜分類し,臨床病理学的検討を行った. (1) 充実型は男性に多くみられた.平均年齢は非充実型のほうが有意に若かった. (2) 肉眼形態は充実型はBorrmann 3型, 2型が多いのに対して,非嫉型ではBorrmann 4型, 3型が多かった. (3) 嫉型は非充実型より静脈侵襲が有意に高率で,侵襲程度も高度であった. (4) リンパ節転移は充実型82.0%, 非充実型79.0%と差異はみられなかったが,肝転移は非充実型の3.0%に対して,充実型では13.7%と有意に高率であった (p<0.01). (5) 低分化腺癌の遠隔成績は不良であるが,亜分類の5年生存率を比較すると,充実型43.5%, 非充実型33.6%であり,充実型の予後が若干良好であった.
  • 森本 芳和, 山崎 芳郎, 坂本 嗣郎, 橋本 純平, 山崎 元, 伊藤 章, 種村 匡弘, 田中 靖士, 河本 陽介, 大塚 浩史, 桑田 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 326-330
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1976年から1990年の15年間に,当科で施行した胃癌切除症例は, 1,146例で,うち34例 (3.0%) に肝硬変合併症例を認めた.その内訳は男30例,女4例,平均年齢60.7±10.2歳で, Child分類ではA群22例, B群12例であった.肝硬変の肉眼的分類では甲型1例に対し,乙型は33例であった.胃癌の進行度分類では, stage I:20例, II:1例, III:7例, IV:6例で肝転移をきたした症例は1例のみであった.手術についてみると,郭清度ではR0:2例, R1:14例, R2:18例と手術時間の短縮,出血量の減少により,可及的手術侵襲の縮小に努めたが,難治性腹水,縫合不全をぎたし,肝不全に至る症例が高頻度に認められた.長期予後についてみると,胃癌再発症例よりむしろ,肝不全死する症例が多く,その要因に肝癌の合併が示唆された.
  • 佐藤 元通, 渡部 祐司, 李 俊尚, 山本 哲也, 大野 淳子, 仲田 裕, 木村 茂
    1993 年 54 巻 2 号 p. 331-336
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝の主要血管に関係しているため,通常の方法で切除が困難な5例の肝癌に対する切除時に, Intermittent hepatic vascular exclusion (IHVE)法を用い,その有用性を検討した.肝血流遮断は平均3.8回,計38分であった.右副腎静脈切離はIHVE中の完全止血に必須である.主要血管近傍の手術操作性は向上したため,安全性も向上した.遮断中の血圧の変動は少なかったが,肝下部下大静脈圧上昇,心拍出量軽度低下を認めた.胸水貯留を4例で認めた以外は術後合併症はなかった.以上よりIHVEは主要血管に近い肝癌の肝切除において,無血野を確保することにより,手術の操作性,安全性を向上する有用な方法である.
  • 中島 公博, 加藤 紘之, 奥芝 俊一, 下沢 英二, 田辺 達三
    1993 年 54 巻 2 号 p. 337-343
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科および関連施設での胆嚢癌切除症例87例について臨床病理学的に癌の進展度,浸潤様式,予後について検討した.深達度と予後との関係では,深達度m, pmの5年生存率は100%であったが,術前に診断されている症例は28.6%, 38.6%と低率であった.また深達度ssの5年生存率は55%であり,さらにseは34%, siは15%と非常に予後不良であった.各種因子と予後との関係では肉眼的進行度分類,肉眼的十二指腸間膜浸潤 (Binf), 深達度, n因子が重要であった.
    術式の選択ならびに予後を向上させるためには術前,術中の深達度,進展形式の診断が重要であり,特に最近では超音波内視鏡が深達度診断に有用であった.手術術式の選択は進展様式,深達度,リンパ節転移の有無に応じ,術前に十分に検討した上で拡大胆摘術,肝右葉切除,膵頭十二指腸切除などを行っている.
  • 金子 哲也, 中尾 昭公, 原田 明生, 野浪 敏明, 高木 弘
    1993 年 54 巻 2 号 p. 344-349
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近の画像診断の進歩にもかかわらず,胆膵領域の悪性腫瘍においては依然と進行癌が多い.一方,術前術後管理の進歩により,進行癌に対し拡大手術が施行されており肝切除を伴う膵頭十二指腸切除術(以下HPD) の適応も増加しつつある. 1987年7月より1991年8月までに教室で経験したHPDは10例であり肝2区域以上が7例, 2区域未満が3例であった. HPD全例の術死率は30%であり, 50%平均生存期間は1.34年. 2区域以上HPD例の術死率28%であり, 50%平均生存期間1.22年であった.2区域以上HPD例において耐術例と非耐術例を比較すると,術前ビリルビン値上昇,胆管炎の存在が危険因子であり,術後アルカリホスファターゼの上昇は耐術の指標になると考えられた.非耐術例は2例でいずれも男性で表層拡大型胆管癌であった.耐術例のうち2例に長期生存例がみられた.今後,術前管理,術式の改善による手術成績の改善が必要である.
  • 木下 壽文, 中山 和道, 杉山 俊治, 島田 昇二郎, 吉田 正, 有田 恒彦, 中尾 哲二, 小須賀 健一, 大石 喜六
    1993 年 54 巻 2 号 p. 350-355
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術は手術手技の進歩や術前,術中,術後管理の向上により高齢者に対しても積極的に行われている. 1965年1月から1990年12月までに当科で経験した膵頭部領域癌の膵頭十二指腸切除症例は186例で, 70歳未満は135例; 70歳以上は51例であった. 70歳を基準として非高齢者と高齢者とに分けて比較検討した.術前併存疾患は非高齢者50.4%, 高齢者62.7%で高齢者にやや高率であった.手術時間 (p<0.1), 術中出血量 (p<0.01) では有意差を認めたが, Stage, リンパ節郭清,術後合併症などでは有意差はなかった.予後では乳頭部癌以外は両者とも不良であった.高齢者の膵頭十二指腸切除術と姑息手術の平均生存期間を比較すると膵頭十二指腸切除術が有意に長い.高齢者といえども積極的に膵頭十二指腸切除術を行うが,術後に下痢などの消化吸収障害が起こるため, quality of lifeを十分に考慮して広範囲リンパ節郭清や血管合併切除などの拡大手術を行うことが肝要である.
  • 森 彬, 江口 博, 山村 晋史, 坂田 久信, 安蘇 正和, 今村 秀
    1993 年 54 巻 2 号 p. 356-360
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈腸骨動脈慢性閉塞症 (AIOD) 144例186肢について血行再建術を行い成績を検討した.施行術式は解剖学的バイパス (ANAT) 56例72肢,非解剖学的バイパス (EXT) 76例100肢,血栓内膜摘除 (TEA) 12例14肢であった.累積開存率は3年90.6%, 4年以後は閉塞例なく10年で88.8%であり,術式別には, ANAT群は10年で93.4%, EXT群は9年で80.3%, TEA群は6年で100%であった. EXTについては,大腿-大腿動脈バイパス (F-F) は閉塞例がなく9年で100%であったが,腋窩-大腿動脈バイパス (AX-F) は8年で74.2%で有意差を認めた. AX-F群では浅大腿動脈以下閉塞のrun off不良例については,run off改善手術非施行群,大腿深動脈形成群,大腿-膝窩動脈バイパス (F-P) 群の順に成績がよい傾向にあった. AIODに対してはリスクを検討し可能な限りANATを行うべきであり, EXTを行う場合にはAX-FよりF-Fを選択すること,浅大腿動脈閉塞例にはF-Pを追加することが望ましいと思われた.
  • 佐藤 英記, 島井 信子, 横山 和子
    1993 年 54 巻 2 号 p. 361-364
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    新しい吸入麻酔薬sevofluraneによる麻酔の導入と覚醒に要する時間を, ASA分類1~2の成人20症例を対象として検討した.
    患者入室後各モニターを装着し,脱窒素化の後33%酸素-笑気および1% sevofluraneにて緩徐導入を開始し,挿管時まで4%で維持した.吸入開始より呼名反応消失時,睫毛反射消失時,気管内挿管までの時間を計測した.手術中は酸素-笑気, sevofluraneのみで維持した.手術終了後笑気, sevoflurane吸入を中止し,この時点より呼名反応出現時および抜管時までの時間を計測した.
    吸入開始より呼名反応消失までは平均2.38分,睫毛反射消失までは平均2.33分,気管内挿管までは平均9.51分であった.吸入中止より呼名反応出現までは平均5.45分,抜管までは平均7.99分であった.
    Sevofluraneは,導入,覚醒とも迅速であり,使用方法により更に良い結果が得られると考えられる.
  • 二村 好憲, 春日 好雄, 仲井 淳, 松永 祐治, 都井 真, 小島 玲, 矼 暎雄, 倉澤 隆平, 梅田 整, 井上 博之, 小栗 孝志 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 365-369
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    30年前の初回手術後に再発を繰り返し,今回顎下腺周囲リンパ節に転移したと考えられた,稀な小唾液腺原発の腺房細胞癌の1例を経験したので報告する.患者は66歳男性である.昭和35年,右口腔前庭部の腫瘤で他医にて手術を施行され,昭和61年再び同部の腫瘤に対し摘出術が施行されているが,詳細は不明である.平成3年春頃より右顎下腺部および右口腔前庭部に腫瘤を認め当科を受診した.穿刺吸引細胞診でClass IIIbであったため,精査後両腫瘤に対して外科的治療が行われた.組織診断では,口腔前庭部の小唾液腺を原発とした腺房細胞癌の局所再発およびリンパ節転移であった.
    小唾液腺原発の腺房細胞癌は稀な疾患とされているが, low grade malignancyの臨床像を示し,予後は比較的良好とされている.しかし,再発は比較的多いとされ長期にわたる経過観察が必要と考えられる.
  • 吉川 義朗, 山崎 元, 桑田 圭司, 山崎 芳郎, 橋本 純平, 長岡 真希夫, 森本 芳和, 伊藤 章, 田中 靖士, 河本 陽介, 村 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 370-374
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺のclear cell carcinomaは濾胞癌の-亜型で比較的稀な疾患であり,血行性転移が多く予後不良の疾患である.今回著者らは進行乳癌の術後に重複した甲状腺clear cell carcinomaの1手術例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    患者は50歳女性で,嗄声及び頸部腫瘤を主訴に来院した.超音波検査及び吸引細胞診で甲状腺癌と診断された.患者は7年前に乳癌に対し定型的乳房切除術を受けており,乳癌と甲状腺癌の異時性重複癌であった.術前の超音波検査で甲状腺左下極,右上・下極に腫瘍を認めたため,甲状腺亜全摘を行った.甲状腺癌は乳頭癌とclear cell carcinoma が存在した多中心性発生と考えられた.現在,甲状腺癌の再発の兆候はなく,外来通院中である.
  • 安田 保, 大村 健二, 浦山 博, 石田 文生, 川上 和之, 渡辺 洋宇
    1993 年 54 巻 2 号 p. 375-378
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    甲状腺分化癌は予後良好な疾患であるが,周辺臓器に広範に浸潤した症例にはそれらの合併切除が必要となる.今回われわれは,甲状腺全摘,咽頭喉頭頸部食道切除,遊離空腸移植による頸部食道再建(以下本術式と略)を必要とした気管,頸部食道浸潤を伴う甲状腺癌の3例を経験したので報告する.
    症例1は70歳女性.気管食道浸潤を伴う再発甲状腺癌に対し本術式を施行した.術後,合併症を認めなかったが, 8カ月目に甲状腺癌縦隔再発により死亡した.症例2は57歳女性,孤立性肺転移,気管食道浸潤を伴う甲状腺癌に対し本術式及び肺部分切除を施行した.術後-過性に嚥下困難を認めたが,術後3年の現在ほとんど愁訴なく快適な日常生活を送っている.症例3は74歳女性,多発性肺転移,気管食道浸潤を伴う甲状腺癌に対し本術式を施行した.術後2カ月の現在呼吸困難は消失し, performance statusの著明な改善をみた.
  • 三木 仁司, 大下 和司, 井上 洋行, 河野 宗夫, 広瀬 敏幸, 駒木 幹正, 宇山 正, 泉 啓介, 廣瀬 千恵子, 門田 康正
    1993 年 54 巻 2 号 p. 379-383
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    頸部の交感神経由来の神経鞘腫は比較的少ないが,その中でも多発する例はきわめて稀である.本邦2例目の多発性交感神経鞘腫例を経験したので,報告する.
    症例は, 38歳,女性.右側頸部腫瘤を主訴として,当科受診した.体表に色素斑などは認められなかった.腫瘤は,右胸鎖乳突筋内縁上1/3の部に存在し, 3×2cm大で,弾性硬,表面平滑であった.同部の自発痛,圧痛などの所見は認められなかった.超音波検査, CT, MRIにて,上記腫瘤以外に,右鎖骨下動脈頭側に2cm大の腫瘤も認められ,多発性神経鞘腫疑いにて手術を施行した.手術および病理組織所見から,両腫瘤とも交感神経由来と思われる神経鞘腫であった.術後7カ月の現在,術直後から生じたHorner症候は持続しているが,再発の徴候は認められていない.なお, Gd-DTPAを使用したenhanced-MRIが,本腫瘍の診断に有用であった.
  • 佐井 昇, 安田 公
    1993 年 54 巻 2 号 p. 384-389
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    31歳,女性. 1988年2月頃より嗄声が出現し耳鼻科,内科で精査の結果,左反回神経麻痺を伴う左肺門部結核性リンパ節炎を疑った.抗結核療法を施行したが,嗄声症状の改善はなく,腫瘤陰影も縮小傾向にならないので1990年7月13日,診断,治療目的にて当科で手術を施行した.開胸すると,腫瘍は胸部迷走神経より発生しており,動脈管索近傍では4cm×6cm,頭側へは約1cmの幅のまま頸部迷走神経と連続し,尾側は正常の太さのまま腹部迷走神経に移行していた.胸腔内迷走神経を可及的に切除した.術中所見より術後にCT, MRIを施行したところ,両側の頸部から胸部に至る迷走神経腫瘍であることが判明した.また皮膚科へ術後再度受診させたところ, von Recklinghausen病と診断された.胸腔内迷走神経由来の神経線維腫の報告は極めてまれであり,さらに両の頸部から胸部に至る同疾患の本邦報告例はなかった.
  • 本邦報告例の検討
    松下 啓二, 西牧 敬二, 浦山 弘明, 幕内 雅敏, 沼田 稔
    1993 年 54 巻 2 号 p. 390-394
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.右乳腺腫瘤と同側腋窩有痛性腫瘤を主訴に来院した.穿刺細胞診で非上皮性悪性腫瘍が疑われ,非定型的乳房切断術を施行したが,病理組織学的には, LSG分類non-Hodgkin lymphoma, diffuse mixed typeの悪性リンパ腫と診断された.術後諸検査では他部位に異常がなく,乳腺原発の悪性リンパ腫と診断した.術後化学療法施行後2年を経過した現在,再発は認められていない.本疾患は比較的稀であり,本邦報告例は133例である.本疾患の臨床的特徴を要約すると以下の通りである. (1) 右側C領域が多く,診断時の腫瘍径が乳癌に比べ大きい. (2) 術前診断で画像診断は困難であり,主に組織診に依存する. (3) 5年生存率は37.5%と乳癌に比べ予後不良である. (4) 予後を左右する因子として腫瘍径と腋窩リンパ転移の有無が重要であり,根治手術に加え化学療法等の集学的治療が予後改善に必要である.
  • 楠山 明, 土屋 克彦, 佐藤 修二, 三好 勲, 増渕 正隆, 北 俊文, 桜井 雅夫, 半沢 隆, 伊坪 喜八郎
    1993 年 54 巻 2 号 p. 395-400
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    卵黄嚢腫瘍 (Yolk sac tumor) は,非精上皮腫性胚細胞性腫瘍の一つで稀な症例であり,悪性度が高く,なかでも前縦隔に発生するものは若年男性に多く,予後が極めて不良で,その治療法はまだ確立されていないのが現状である.
    今回われわれは,前縦隔原発腫瘍摘出約1年後,血清α-Fetoprotein (以下AFP) の上昇と共に急速に胸腔内に再発増大した縦隔卵黄嚢腫瘍に対し,術前併用化学療法 (PVB療法: CDDP+VBL+BLM) 施行しAFPが低下した後,横隔膜部分切除を含む右全胸膜肺摘除術を行い,良好な結果が得られた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    本邦報告例を加味すると,縦隔卵黄嚢腫瘍は, AFPが診断・病勢の追跡・治療効果の判定に有用な腫瘍マーカーであると思われた.また,化学療法に加えて,可能な限り積極的な腫瘍摘除が有効であると思われた.
  • 衣笠 誠二, 福本 仁志, 西本 孝, 辻井 英治, 橋本 隆彦, 中尾 雅朋, 森田 大
    1993 年 54 巻 2 号 p. 401-405
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性,不安定狭心症の診断のもと,内胸動脈,胃大網動脈,および大伏在静脈を用いたA-Cバイパス術を施行した.術後第6病日, Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus (以下MRSA) による縦隔炎を併発し,抗生剤溶液及びpovidone iodine液による洗浄を行っていた.術後第13病日,突然心嚢ドレーンから大量の出血を認め,緊急開胸術を施行したところ,内胸動脈が破裂していた.内胸動脈の結紮と腐骨化した胸骨,および肋軟骨の切除を行い,急性期に大胸筋による充填術を行った.術後第49病日,大胸筋機能障害を残すことなく治癒した.大胸筋充填術は, A-Cバイパス術後の縦隔炎に対して有用であると考えられた.
  • 高山 卓也, 岡川 和弘, 金子 正, 木村 豊, 平尾 素宏, 島田 守, 請井 敏定, 宮内 啓輔, 寺島 毅, 水谷 澄夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 406-410
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    狭心症様症状を主訴として来院し,心臓超音波検査と胸部単純X線写真にて発見された肺内および横隔膜内伏針を経験し,その進入経路について考察を加え報告する.
    症例は46歳男性.前胸部痛にて来院.これまで近医にて狭心症の治療を受けていたが,胸部単純X線写真,心臓超音波検査の結果,肺内および横隔膜内伏針と診断する.開胸術にて摘出した伏針は,鍼治療に用いられる日本針に極めて似ており,胸痛を自覚する前に腰部に針治療をうけていることと横隔膜内にも2つの伏針が存在することより,腰背部第1腰椎から第3腰椎間に刺入された針が横隔膜経路で前胸部に至り横隔膜内で針の一部が折れた可能性が高いと考えた.本例のような肺・横隔膜内異物,特に伏針の症例で横隔膜経路での侵入が疑われた報告は今日までみられない極めて稀な例と思われる.今後,横隔膜に残る2つの伏針については症状や位置について経過を追う予定である.
  • 河 新洙, 鄭 容錫, 山下 隆史, 青松 敬補, 金村 洙行, 曽和 融生
    1993 年 54 巻 2 号 p. 411-416
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳女性で,生来健康で学童期に異常を指摘されていない.軽度の腹痛がみられ近医を受診し,左下肺野の異常陰影を指摘され,精査目的にて来院した,注腸造影にて結腸が脾蛮曲部を先進部として,横隔膜後外側から胸腔内に入っており,成人型Bochdalek孔ヘルニアと診断された.手術は経腹的に横隔膜裂孔閉鎖術を行い,5年後の現在も異常なく経過している.成人に発症するBochdalek孔ヘルニアは比較的まれで,本邦での報告例は,自験例を含め, 69例がみられるにすぎない.発症年齢は男女とも20歳代に最も多く,最高は78歳であった.症状は軽度の腹痛や咳漱からイレウスにいたるものまでみられた.またイレウスによりショック症状を呈したり,妊産婦では母子ともに死亡した症例も報告されていることから,無症状であっても積極的に手術をすべきであると思われた.
  • 出口 久次, 磯貝 正博, 緒方 秀昭, 継 行男, 大瀧 和彦, 朝倉 斌
    1993 年 54 巻 2 号 p. 417-421
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横行結腸と大網を内容とするMorgagni孔ヘルニアの1例を経験したので報告する.
    症例は72歳の女性で,約6年前より右胸部の不快感を自覚したが放置していた.その後不快感が持続的になったため某医を受診し,胸部X線検査で異常陰影を指摘され入院した.胸部単純正面像で右下肺野に境界比較的鮮明な含気性の腫瘤陰影を,側面像では前縦隔下方で胸骨後面に接して同様の所見を認めた.また注腸造影では横行結腸が胸腔内に嵌入している所見がみられ,さらに胸部CTで胸骨後面から前縦隔にかけての腸管の脱出を確認した.以上の所見よりMorgagni孔ヘルニアと診断し手術を行った.手術は経腹的に行い,右横隔膜の裂隙より横行結腸が嵌入していた.嵌入腸管は約7cmで,ヘルニア門は5×4cm大であった.ヘルニア嚢を腹腔側に反転し,ヘルニア門を結節縫合で閉鎖した.術後は,術前の胸部不快感は改善し, X線像でも異常陰影は消失した.
  • 寺田 順二, 由良 二郎, 神谷 保廣, 上田 修久, 浅野 実樹, 三島 晃, 佐竹 章, 竹内 寧, 大久保 憲, 宇佐見 詞津夫, 小 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 422-426
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    受傷後36年目に発症した左外傷性横隔膜ヘルニアの1例を経験したので,診断につき考察を加え報告する.症例は57歳の男性で, 36年前,炭坑で落盤事故に遇い左肋骨多発骨折を受傷し,その2年後の健康診断にて左横隔膜挙上を指摘されたが放置していた. 1991年2月25日朝より嘔気の後に呼吸困難が出現し来院した.胸部X線像にて左胸腔内に拡張した胃泡,および腸管のガス像を認め,胃ゾンデによる減圧にて呼吸困難は消失した. 3月14日手術を施行した.開腹すると左横隔膜後側方に径10cmの欠損孔と同部より胸腔内へ胃,脾臓,小腸,大腸の嵌入を認めた.外傷の既往があること,腸回転異常を認めなかったこと,横隔膜腱膜部の広範な欠損を認めたことより外傷性横隔膜ヘルニアと診断した.
  • 上川 康明, 猶本 良夫, 井上 文之, 舟木 直人, 石井 泰則, 石塚 真示, 慎 隆範, 金子 晃久, 合地 明, 日伝 晶夫, 田中 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 427-432
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃全摘後食道空腸吻合にmajor leakageを来し,十分なドレナージや栄養管理にもかかわらず局所の感染がコントロールできず,臨床所見の増悪を認め救命が困難と考えられるような症例に対する新しい処置法として著老らは食道粘膜抜去法を応用した術式を考案し, 2症例に施行して好結果を得た.本法は胸部食道の粘膜のみをvein stripperを用いて抜去し,頸部食道瘻を造設,残った食道筋筒の上下端を結紮,さらに再建に供されていた空腸は断端を処理し経腸栄養チューブを挿入して皮下に埋没させるものである.本法の利点は, (1) 感染症の治療の中で最も重要な感染源の排除が完全に達成されること, (2) 重症例にも適応できる範囲内の手術侵襲と考えられること, (3) 経腸栄養がただちに開始できること, (4) 食道全層抜去と違い,手技が容易で縦隔へ感染を拡大させる危険性がなく,止血も食道筋筒のタンポナーデ効果により確実であることが挙げられる.
  • 八十島 孝博, 向谷 充宏, 宍戸 隆之, 鈴木 一弘, 三神 俊彦, 木村 弘通, 伝野 隆一, 平田 公一
    1993 年 54 巻 2 号 p. 433-439
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜腫瘍との鑑別が困難であった十二指腸原発カルチノイドの膵頭後部リンパ節転移症例を経験したので報告する.症例は, 48歳女性で定期検診にて右上腹部腫瘤を触知され, US, CTを施行したところ膵頭後部に7.5cmの腫瘤を指摘され,精査のため入院した. ERCPではVater乳頭の口側に1.5cm大の隆起性病変を認め,生検の結果十二指腸カルチノイドの診断を得た.なお,膵頭後部に存在する腫瘤を考えるには原発巣に比し余りに大きいため原発性リンパ節転移と後腹膜腫瘍も念頭におき,膵頭十二指腸切除術を施行した.摘出標本では, Vater乳頭の口側に1.5×1.5×1.0cm, 膵頭後部に4.5×5.5×4.5cmと3.0×2.5×2.5cmの連続する2個の腫瘍を認め,病理組織学的にはいずれもGrkmelius染色陽性で,十二指腸原発カルチノイドとその膵頭後部リンパ節への転移と診断した. 2cm以下の十二指腸カルチノイドにおいてもリンパ節郭清を含む根治手術が必要であることが示唆された.
  • 前田 史一, 東野 正幸, 木下 博明
    1993 年 54 巻 2 号 p. 440-445
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虚血性腸炎が小腸に発生することは少なく,それにより腸管の狭窄を起こすことは稀とされている.今回,われわれは虚血性腸炎が原因と思われる小腸狭窄の1例を経験したので報告する.
    症例は77歳の女性で,既往歴に高血圧があり突然の嘔吐と腹部膨満で発症,来院時は麻痺性イレウスを呈し保存的治療にて軽快した.しかし4週間後再び嘔吐と熱発,腹部X線検査にて機械的イレウス像を示したため開腹した.手術所見では小腸の一部が境界明瞭な索状となっており,小腸部分切除を施行した.術後の病理組織学的検査では虚血性小腸炎と診断された.
    狭窄型を来した虚血性小腸炎の1治験例および本邦報告例についてその特徴を報告する.
  • 鶴野 由佳, 久米川 啓, 田中 聰
    1993 年 54 巻 2 号 p. 446-449
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸過誤腫は非常に稀な疾患といえる.
    検索し得た限りの本邦報告では,小腸過誤腫は,本症例を含めて8例であった.報告例の平均年齢は36.1歳,性差ではやや男性が優位であった.発生部位では空腸,回腸に差はなく,大きさは全て3.5cm以下であった.
    自験例は胃癌に合併した症例で,その手術中偶然に発見されたものであり,無症状の小腸腫瘍に対する術中検査の重要性を示唆するものである.
  • 本邦報告95例の原発性空腸,回腸癌の検討
    池口 正英, 西土井 英昭, 工藤 浩史, 村上 敏, 正木 忠夫, 谷口 遙, 前田 宏仁, 尾崎 行男
    1993 年 54 巻 2 号 p. 450-454
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    原発性回腸未分化癌の1例を報告するとともに,自験例を含めた原発性小腸癌95例の臨床病理学的検討を行った.
    症例は63歳男性で,腫瘍はBauhin弁より口側150cmの回腸にあり,隆起型で,大きさ4×3cm, 組織型は未分化型癌で, P0, H0, ss, ly2, v0, n (-), M(-) で根治手術を施行し得た.
    空腸癌59病変,回腸癌33病変ではTreitz, Bauhinより49cm以内に64病変 (69.6%) が集中し,高分化,中分化腺癌が主体で,低分化腺癌,未分化癌は12~13%にすぎなかった.一方Treitz, Bauhinより50cm以上離れた部位では,低分化腺癌,未分化癌の割合が35.7%に増加した.
    術前CEAが5ng/ml以上の13例中9例 (69.2%) が非治癒切除で,腹膜播種 (5/9), 肝転移 (3/9), 腹部大動脈周囲リンパ節転移 (2/9), 高度局所浸潤 (2/9) が認められ, CEA値は小腸癌の進行度をよく反影する指標と考えられた.
  • 今津 浩喜, 笠原 正男, 黒田 誠, 田代 和弘, 城野 健児, 竹下 健也, 丹羽 基博, 村上 正基, 見元 裕司, 南 圭介, 溝口 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 455-460
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    消化管に発生する原因不明の炎症性腫瘤と称されている innammatory fibroid polyp (以下IFP) の小腸及び大腸での発生は比較的少なく,著者らの検索しえた範囲内では,小腸50例,大腸10例の報告を数えるのみである.症例1.40歳,女性.下腹部痛,便秘を主訴とし,卵巣腫瘍の疑いにて手術施行.回腸に腫瘍を先進部とした腸重積を認め,回腸部分切除を施行. 4×4×5cm大,有茎性の腫瘍を認めた.症例2.43歳,男性.検診にて大腸ポリープを指摘. S状結腸に3×2cm大のソーセージ状の腫瘍を認め, S状結腸部分切除を施行した.各症例とも腫瘍本体は,疎な膠原繊維,線維芽細胞の増生及び好酸球を主体にリンパ球,形質細胞の浸潤が観察された.
  • 八巻 隆, 板東 隆文, 豊島 宏, 笠原 大城
    1993 年 54 巻 2 号 p. 461-465
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は43歳女性.突然の腹痛,腹満で受診した.来院時の腹部X線では左下腹部に著明に拡張したS状結腸と思われるコンマ状のガス像を認め,注腸X線検査ではS状結腸でのバリウムの途切れとbird beak signを認めたため, S状結腸軸捻症の診断で開腹術を施行した.手術所見ではS状結腸には異常はなく,著明に拡張した盲腸が上行結腸下端を中心に反時計回りに360°回転し,盲腸軸捻転症であることが判明した.腸管壊死はなく,長い移動盲腸症を認めたので捻転した盲腸を整復した後,盲腸と壁側腹膜の固定術を施行した.術後経過は良好であり現在まで再発はない.本症は比較的まれな疾患で,術前診断は困難である.腸管壊死が認められなかった自験例では整復術兼固定術で良好な結果が得られた.
  • 中川 国利, 土屋 誉, 桃野 哲, 佐藤 寿雄
    1993 年 54 巻 2 号 p. 466-470
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    偽膜性大腸炎症例の多くは,保存的治療で治癒する.しかし,診断が遅れた例では,穿孔,狭窄などの合併症にて,外科的治療を要する例がある.最近われわれは,低蛋白血症にてS状結腸を切除した,偽膜性大腸炎の1例を経験したので報告する.症例は45歳の女性で,上気道炎にて近医より抗生剤を投与された,服用後,下痢が生じ,以後5ヵ月間にわたり,種々の抗生剤や止瀉剤を投与された.次第に,粘血便を混じた下痢や下腹部痛が著明となった.注腸造影ではS状結腸の伸展不良を,内視鏡検査では粘膜の発赤・腫脹,膿苔の付着を認めた.またTc-アルプミンシンチでS状結腸からの蛋白漏出を認めたため,蛋白漏出性腸症としてS状結腸を切除した.しかし,切除標本の病理組織学的検査では,偽膜性大腸炎であった.以上より,抗生剤投与中および投与直後に下痢が生じた例では,偽膜性大腸炎を疑い,より早期に適切なる治療を行う必要がある.
  • 林部 章, 鬼頭 秀樹, 樽谷 英二, 阪本 一次, 中上 健, 柳 善佑, 十倉 寛治, 浅田 健蔵, 竹林 淳, 田中 勲
    1993 年 54 巻 2 号 p. 471-474
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は14歳女子で主訴は水様性下痢及び両下肢浮腫,注腸・大腸内視鏡検査にて直腸に全周性のIIa集簇様隆起性病変を伴った大腸多発性ポリープを認め,著明な低蛋白血症 (TP 3.7g/dl), IgG低値・α1-アンチトリプシンクリアランスの増加と99mTc-HSAシンチグラムにおいて直腸からS状結腸にかけてアイソトープの漏出が証明された.以上より蛋白漏出性胃腸症を伴った大腸多発性ポリープと診断した.本症における大腸病変は異型性の軽い腺管腺腫であったが,肉眼的にはいわゆるIIa集簇様病変であり高い癌化率を認めるとされる形態であったことと,蛋白漏出性胃腸症も合併していたことより,若年者ではあるが直腸・S状結腸切除術を施行した.この症例につき文献的考察を加えて報告する.
  • 椎木 滋雄, 桑田 康典, 柏原 瑩爾, 上田 祐造, 合地 明, 折田 薫三
    1993 年 54 巻 2 号 p. 475-478
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    結腸間膜原発平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は79歳,女性.腹部腫瘤を主訴に来院した.腹部CT検査では上腹部に分葉状隔壁を有する巨大な腫瘤像を認めた.腹部血管造影では中結腸動脈より栄養される腫瘍陰影を認め,早期より静脈相が造影されていた.横行結腸間膜原発の腫瘍と診断し手術を施行した.横行結腸間膜に15×15×12cm, 1,430gの腫瘍を認め,結腸間膜および大網の一部とともに摘出した.組織学的には平滑筋芽細胞腫と診断された.術後3年6カ月を経過した現在,再発・転移を認めない.
  • 菅野 公司, 奥村 輝, 花上 仁, 田島 知郎, 三富 利夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 479-483
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,進行性盲腸癌に卵巣腫瘍をともない,病理学的に卵巣Brenner腫瘍の合併と判明した稀な症例を経験した.症例は87歳女性で,腹部膨満感,嘔気,便秘を主訴に入院し,理学的所見にて,腹部の膨隆,圧痛,右下腹部の腫瘤及び子宮膣部上方の腫瘤を認めた.下部消化管造影検査,大腸ファイバースコピーにて盲腸に1型進行癌を認め,生検にて腺癌と診断された.更に腹部超音波,腹部CT等施行し,肝腫瘤,右付属器腫瘍を認め,盲腸癌,肝および卵巣転移の診断にて手術を施行した.開腹所見では,リンパ節転移,腹膜播種,肝右葉壁側腹膜浸潤を伴う.進行性盲腸癌に右卵巣腫瘍を合併し,右半結腸切除術,右付属器切除術を行った.切除標本にて,リンパ節転移を伴う盲腸の粘液癌および卵巣Brenner腫瘍と診断された. Brenner腫瘍は稀な腫瘍であり,更に大腸癌との合併は,殆ど報告を見ないので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 江里口 直文, 松添 慎一, 西田 博之, 奥田 康司, 原 雅雄, 木通 隆行, 星野 弘也, 久保田 治秀, 中山 和道, 大石 喜六
    1993 年 54 巻 2 号 p. 484-488
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝転移および高度な肝門部リンパ節転移をともなうS状結腸癌の症例を経験したので報告する.症例は53歳,女性.帯状庖疹のため近医受診した際,腹部超音波断層検査にて肝臓腫瘍を指摘された.腫瘍は著明な石灰化を伴い,さらに肝門部,肝十二指腸間膜リンパ節の腫大が認められた.血清CEA値が高値であったことより注腸造影を行いS状結腸に腫瘤陰影を認めた.また血管造影などの画像診断にて胆管,右肝静脈,門脈などの狭窄や閉塞が認められた.手術を施行しS状結腸切除+リンパ節郭清,肝右葉切除+肝門部リンパ節郭清を行った.肝門部のリンパ節に転移した手術症例の報告例は多くはなく,今後転移性肝臓腫瘍にたいしては,肝門部リンパ節郭清を考慮に入れる必要性を感じた.
  • 敷島 裕之, 坂入 隆人, 塚田 守雄, 松村 道夫, 加藤 紘之, 田辺 達三
    1993 年 54 巻 2 号 p. 489-493
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性で,主訴は発熱と左上腹部痛である.血液生化学検査では赤沈の元進, CRP陽性を認めた.腹部超音波検査では肝左葉外側区に径2cmの境界明瞭,内部不均一な低エコー領域を認め,腹部単純CT検査では同部に低吸収腫瘍影,また造影CTでは周囲がリング状に造影される腫瘤影を認めた.悪性腫瘍を否定できず,肝左葉外側区部分切除術を施行したところ,外側下区域に直径2cmの境界明瞭な黄色の腫瘤が存在した.組織学的には膠原繊維の増生を伴う肉芽腫様の組織で形質細胞を中心とした炎症細胞の浸潤が強く, Inflammatory pseudotumorと診断された.肝原発の本疾患はまれであり若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 矢野 誠司, 田村 勝洋, 橋本 幸直, 舟塚 雅英, 板倉 正幸, 石田 徹, 井上 康, 中川 正久, 中瀬 明, 長岡 三郎, 三浦 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 494-499
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前に確定診断がつかず,切除標本にて初めて肝原発性カルチノイドと診断された1例を経験した.症例は56歳,女性.食欲不振,体重減少を主訴とし,画像診断で肝腫瘤を指摘され,肝細胞癌,肝血管腫などが疑われ,体外肝切除にて腫瘤を摘出した.術中迅速病理診断では肝細胞癌であったが,術後の病理組織所見では,腫瘍細胞は小型類円形核を有し,胞巣,索状,偽ロゼット形成を呈し, Grimelius, Fontana-Masson染色は陰性であったが,免疫組織染色ではセロトニン, neuron specific enolase (NSE) 染色陽性を示し,カルチノイドと診断された.また,術後,消化管を中心とした検索に異常はなく,単発性であることより肝原発性と考えられた.本邦における原発性肝カルチノイドは,現在までに11例が報告されているにすぎず,非常に稀な疾患であった.
  • 佐藤 之俊, 久保 琢自, 出川 寿一, 高木 淳彦, 坂本 昌義, 丸山 雄二
    1993 年 54 巻 2 号 p. 500-505
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    4例の肝外発育型肝細胞癌切除例を経験し,それらの臨床病理学的特徴を検討し,さらに外科治療について考察を加えた. 4切除例の特徴は, (1) 肉眼的に3例は突出型で, 1例が有茎型であった. (2) 2例において血管造影上腫瘍は肝動脈以外の栄養血管を有しており,術前診断がきわめて困難であった. (3) 4例とも肝硬変を合併していた. (4) 切除術式は肝部分切除を3例に,肝左葉外側区域切除を1例に施行したが, 2例において断端陽性であった. (5) 4例とも術後早期に残肝再発あるいは断端再発を示し,全例術後1~11カ月で死亡した.文献的考察を加え,肝外発育型肝細胞癌に対する外科治療としては,突出型,有茎型を問わず肝切除範囲を十分とる必要があると考えられた.
  • 大淵 俊朗, 窪田 敬一, 有園 さおり, 中尾 健太郎, 太田 秀二郎, 津嶋 秀史, 照屋 正則, 梶浦 直章, 福永 昇
    1993 年 54 巻 2 号 p. 506-509
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    副肝は1991年までに本邦で50例の報告を見るに過ぎない稀な肝の発生異常である.今回われわれは腹腔鏡的胆嚢摘出術により偶然胆嚢に副肝を認めた症例を経験した.症例は64歳女性.無症候性胆嚢ポリープに対し腹腔鏡的胆嚢摘出術を施行した.胆嚢体部漿膜側に小豆大でポリープ状の副肝を認めた.副肝は胆嚢に索状物により付着しているが,主肝との直接的な連絡は認めなかった.また主肝を含め腹腔内に形態上の異常は認めなかった.組織学的には,グリソン鞘に動静脈及び胆管が存在する等ほぼ正常な肝組織構造が認められ,胞体内には胆汁色素も認められた.但し,副肝は主肝と直接の連続性は無く,副肝は胆嚢壁と結合織により癒着し,胆嚢動静脈の枝と連絡していた.
  • 花上 仁, 菅野 公司, 久保 博嗣, 田島 知郎, 三富 利夫
    1993 年 54 巻 2 号 p. 510-513
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは非常に稀な左側胆嚢の1例を経験したので報告した.患者は62歳女性でStage IV胃癌の手術中に胆嚢窩が肝円索の左側で胆嚢管が総胆管の左側に開口している Gross II型の左側胆嚢が発見された.自験例を含めた本邦報告47例について文献的に考察を加えた.男女比は19:28で平均年齢は54.9歳であった.主訴は心窩部痛など合併症によるものが多く本症特有な症状を欠くため術前診断率は46%と低かった.併存疾患では胆石が30例 (64%) と最も多く次いで肝疾患26例 (55%), 悪性腫瘍11例 (23%), 腸管奇形その他10例 (21%) であった.そのうち先天奇形と考えられる疾患が19例 (40%) 認められた. 33例 (77%) に合併疾患の手術がなされている.本疾患はCT, USなどの非侵襲的画像診断で診断可能であるが治療に際しては合併疾患に十分な注意が必要である.
  • 呉山 泰進, 片岡 誠, 服部 浩次, 桑原 義之, 川村 弘之, 三谷 眞己, 岩田 宏, 坂上 充志, 篠田 憲幸, 加島 健利, 佐藤 ...
    1993 年 54 巻 2 号 p. 514-518
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    経皮経肝胆道鏡 (PTCS) 下の拡張術により軽快した外傷性胆管狭窄の1例を経験したので本邦報告例22例を集計し考察を加え報告する.症例は53歳,男性.上腹部の鈍的外傷後2週間で黄疸を発現した.臨床経過,画像診断により本症が疑われ, PTCSにより確定診断した. 18FrのPTCSチューブを用いた拡張術により術後2年を経過した現在,再発なく良好に経過している.今回の集計では確定診断が困難なこともあり16例に開腹術が施行されているが,最近自験例を含めた4例に拡張術が施行され,良好な結果が得られている.本症に対するPTCS下の拡張術は開腹術に比べてより生理的であり今後行われるべき方法と考えられた.
  • 楯川 幸弘, 山田 行重, 金廣 裕道, 中島 祥介, 中野 博重, 豊坂 昭弘
    1993 年 54 巻 2 号 p. 519-522
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性胆道閉鎖症の患児に尉して葛西手術を施行,術直後よりプロスタグランジンE1を投与し良好な経過を示した1例を経験したので報告する.
    症例は生後10日目に灰白色便がみられ,その後眼球結膜の黄染に気づき19日目に当科紹介入院となった.精査にて先天性胆道閉鎖症を疑い生後49日目に手術を施行した.術中所見により先天性胆道閉鎖症と診断し肝門部拡大切離術を施行した.胆汁流出の促進を目的として,術直後よりプロスタグランジンE1を投与した.術前5.8mg/dlであったビリルピン値は,術後15日目には2.0mg/dlとすみやかに減少し,70日目に軽快退院となり現在外来通院中である.
    臨床において,肝保護の目的として使用されているPGE1の利胆効果は胆道閉鎖症術後においてもその効果が期待される.
  • 島影 尚弘, 新国 恵也, 師岡 長, 佐藤 錬一郎
    1993 年 54 巻 2 号 p. 523-527
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    われわれは,胆管が胃に異所開口する極めて稀な重複胆管症の1例を経験した.症例は68歳の男性.上腹部痛で発症し胃角部の粘膜下腫瘍の術前診断で開腹術を施行したが,胃粘膜下腫瘍と診断された部位は,異所胆管の開口部であり,本来の総胆管とは別個の胆管が肝門部胆管から胃角部に達していた.異所胆管内には黒色石1個が存在した.本来の肝外胆管と胆嚢は通常の位置に存在した.肝内胆管の分岐異常はなく,膵胆管合流異常も認められなかった.腹部血管造影では腹腔腸間膜動脈幹型分岐を示した.重複胆管症の発生機序,分岐形態,治療等について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 吉田 和彦, 藤川 亨, 西田 雄, 串田 則章, 岡部 紀正
    1993 年 54 巻 2 号 p. 528-531
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総胆管結石を伴った先天性胆嚢欠損症を経験したので報告する.症例は89歳の女性で黄疸と発熱を主訴に近医へ入院した.精査の結果,総胆管結石と診断され手術目的で当科へ転院となった. CT scan, DIC, ERCPにて総胆管結石が認められたが胆嚢は描出されなかった.開腹すると胆嚢は存在せず,総胆管切開による切石を施行した.挿入したT-tubeからの胆道造影でも胆嚢は描出されず,先天性胆嚢欠損症と診断した.
  • 小野寺 一彦, 大江 成博, 澤 雅之, 間宮 規章, 加藤 一哉, 草野 満夫, 葛西 眞一, 水戸 廸郎
    1993 年 54 巻 2 号 p. 532-536
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総胆管コレステローシスは胆嚢コレステローシスに比べぎわめてまれと考えられてきた.われわれはこの症例を術後6年間フォローアップし,その異常所見の臨床的意義について考察した.
    患者は55歳男性で,胆嚢ポリープの手術目的にて当科へ入院した, DICで径11mmの総胆管の下部に不規則な陰影欠損を認めたため,術中胆道ファイバーを行ったところ,同部に黄白色の多発性ポリープ様コレステローシスを確認した.フォガティカテーテルで採取したこの病変には組織学的に上皮下層の泡沫細胞が証明された.本例は胆嚢摘出術と T チューブドレナージが施行され,術後にTチューブを通してポリープの幾つかを除去したにもかかわらず病変は残存した.しかしその後6年間DIC所見は術前と同様であったが,症状はなく肝機能検査上も正常であった.よって本症の病的意義は少なく過大侵襲は慎むべきと考えられた.
  • 三方 律治, 今尾 貞夫, 小松 秀樹
    1993 年 54 巻 2 号 p. 537-541
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    5年間に入院治療した腎細胞癌31例中6例が他臓器癌を合併していた.胃癌との重複癌2例の臨床経過を報告した.他の症例は子宮頸癌とセミノーマとの重複が各1例,膀胱癌との重複が2例であうた.腎細胞癌の関連する臨床重複癌について臨床的検討を行った.無症状の腎細胞癌が画像診断法で偶然発見される頻度が増えるにつれて,腎細胞癌に関連する重複癌もさらに増加すると推察した.
  • 友田 信之, 内野 良彦, 池田 秀郎, 島 弘志, 原 雅雄, 大橋 昌敬, 平安 明, 赤岩 正夫, 西原 春實
    1993 年 54 巻 2 号 p. 542-546
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    最近5年間に閉鎖孔ヘルニア7例を経験したので,診断及び治療の特異性や問題点について報告する.患者はすぺて女性で,年齢は63~91歳,平均76.7歳で痩せて小柄な人が多かった. 6例はイレウス症状, 1例のみは嵌頓腸管が穿孔をきたしており腹膜炎症状で発症した.術前診断がついたのは3例で共にHowship-Romberg 徴候を認めた.このうち1例のみは小腸造影, USで嵌頓せる腸管を確認し得た.
    手術所見では,ヘルニア内容はすべて小腸で回腸末端部から80~120cm以内の回腸に多かった.手術は4例に腸切除を施行したが,発症から手術迄の期間が長い例ほど,腸切除が必要であった.手術死亡は7例中1例であった.高齢者の原因不明のイレウス症例では常に本症を念頭におく必要があり,詳細な問診によるH, R徴候の有無が診断上重要である.確定診断のためには, US, CTを行えば,早期診断が可能と思われた.
  • 廣本 雅之, 日下部 輝夫, 森 秀樹, 前田 隆志, 津嶋 秀史, 小松 信男, 小林 明彦
    1993 年 54 巻 2 号 p. 547-550
    発行日: 1993/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    陥入爪は日常しぼしば遭遇する疾患でありながら,本症を対象とした研究は少ない.今回, 1989年4月より1991年10月までに,当院において経験した第1趾陥入爪手術例80例, 103病巣につき,その手術法を紹介するとともに,若干の検討を加え報告する.
    陥入爪症例の年齢分布は, 10歳台, 20歳台で約2/3を占め,性別では,男女比1:1.2と女性に多かった.罹患部位では,若干,右に多く,また,左右いずれも外側に多かった.
    術後再発は11例 (10.7%) に認められ,右内側,左外側に多く,その再発形式は,爪棘の出現6例,爪甲の陥入再発4例,類上皮嚢胞形成1例であった.
    陥入爪の治療については,現在のところ外科的治療が推奨されるが,その施行にあたっては,より慎重かつ確実な手術を行うことが必要である.
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