1993 年 54 巻 2 号 p. 401-405
症例は73歳男性,不安定狭心症の診断のもと,内胸動脈,胃大網動脈,および大伏在静脈を用いたA-Cバイパス術を施行した.術後第6病日, Methicillin Resistant Staphylococcus Aureus (以下MRSA) による縦隔炎を併発し,抗生剤溶液及びpovidone iodine液による洗浄を行っていた.術後第13病日,突然心嚢ドレーンから大量の出血を認め,緊急開胸術を施行したところ,内胸動脈が破裂していた.内胸動脈の結紮と腐骨化した胸骨,および肋軟骨の切除を行い,急性期に大胸筋による充填術を行った.術後第49病日,大胸筋機能障害を残すことなく治癒した.大胸筋充填術は, A-Cバイパス術後の縦隔炎に対して有用であると考えられた.