日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
慢性イレウス状態を繰り返し,診断に苦慮した小腸結核の1例
篠原 浩一前田 守孝上田 祐滋児玉 吉明宮崎 俊明豊田 清一
著者情報
キーワード: 小腸結核, 小腸嚢状拡張
ジャーナル フリー

1993 年 54 巻 3 号 p. 682-686

詳細
抄録

長期にわたるイレウス状態を繰り返し診断の困難であった原発性空腸結核の1例を報告する.
症例は64歳の女性で,慢性の腹部膨満感,腹痛を主訴に来院した.胸部X線写真に異常なく腹部単純X線写真にて小腸の著明な拡張像とNiveau像が認められた.経口小腸造影では小腸の一部に嚢状の異常拡張像がみられた.
開腹所見では空腸に嚢状拡張部分を認め,その肛門側は狭窄しており,腸間膜リンパ節は多数腫大していた.腸切除術を施行し端々吻合した.切除標本の病理組織学的検査で結核と診断し得た.
本症例は肺に腸結核を伴わない,いわゆる原発性腸結核であるが,本症例の如く病変部が異常な嚢状拡張を呈しイレウス状態を反復した症例は稀である.また本症例では経過中,血中CA125の高値を呈したが,これについても若干の文献的考察を加え報告した.

著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top