1993 年 54 巻 6 号 p. 1573-1579
症例は66歳,男性で,下腹部痛と下血を主訴に近医を受診し,虚血性大腸炎(狭窄型)の診断で保存的療法を受けた.直腸狭窄が進行し亜イレウスの状態となったため,前方切除術を施行した.切除標本では狭窄部は全層が硬化し,その周囲の粘膜はcobble-stone様, longitudinal ulcer様であった.病理組織学的検査で直腸Crohn病と診断された.術後経過良好で社会復帰している.
本邦報告例18例(自験例を含む)を集計し得,報告例を考察すると,治療前に確定診断を得たのは4例しかなく,切除手術を行ったのは13例であった.報告例においては症例数は少ないが,術前診断は困難であるものの,観察期間に問題はあるが,再発例のないことからも,本症例の治療としては切除が望ましい治療法であると考えられた.