日本臨床外科医学会雑誌
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炎症性腹部大動脈瘤の1治験例
藤田 雄司森 文樹河野 和明藤原 敏典吉岡 嘉明田村 陽一江里 健輔
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キーワード: 炎症性腹部大動脈瘤
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1993 年 54 巻 8 号 p. 2063-2066

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抄録

炎症性腹部大動脈瘤の発生頻度は腹部大動脈瘤の約20%前後であることが報告されてから,最近急速に注目されている.今回われわれは炎症性腹部大動脈瘤の1例を経験したので,最近の治療法をふまえて報告する.症例は62歳の女性で,夜間の発作性腹痛・腰痛を主訴とした.血圧は正常で,貧血や炎症所見あるいは,尿路系障害もなかった.腹部エコー及びCTでは,腎動脈分岐部直下に最大横径4cm, 縦径8.5cmの紡錘状動脈瘤を認めた.動脈壁は約1cmとマントル状に肥厚し,壁内には石灰化があった.瘤壁は約1cm厚に肥厚,線維化しており,内膜には中等度の動脈硬化性変化が認められるに過ぎなかった.径18mmY型Dacron人工血管にて置換術を行った.組織学的には,炎症性腹部大動脈瘤であった.本症は破裂しにくいと言われているが,症状を伴う場合には積極的に手術をすべきである.

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