日本臨床外科医学会雑誌
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骨盤内悪性血管外皮腫の1例
治療開始後7年6ヵ月の観察
辻 寧重勝木 良雄安田 隆義西村 昭男
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1994 年 55 巻 1 号 p. 208-211

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抄録
治療開始後7年6ヵ月生存しえた骨盤内悪性血管外皮腫の1例を経験した.症例は70歳,女性,主訴は左殿部および左下肢の痔痛である. 1984年6月初診,左殿部に9×7cmの堅い腫瘤を触知し, CTにて骨盤の骨破壊像をともない腹腔側へ突出する腫瘍をみとめた.血管造影では左内腸骨動脈領域支配のhypervascularな腫瘍で,生検にて悪性血管外皮腫と診断された.左内腸骨動脈のTAEにて50%の腫瘍縮小が得られたので,さらにリザーパーを用いてADM総量520mgの化学療法を施行した.腫瘍はさらに縮小して内部が壊死におちいり,腫瘍縮小率は最大60%となった.その後コバルト60による放射線治療を加え,腫瘍内部の石灰化がすすんだ.治療開始7年6ヵ月後の1991年12月,左大腿骨骨折後に全身衰弱にて死亡するまで腫瘍の増大傾向はなかった.本症例は悪性血管外皮腫の支配血管のTAE,動注化学療法および放射線療法の集学的治療が極めて有効であった1例と考える.
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