日本臨床外科医学会雑誌
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胆管炎を併発した炎症性肝嚢胞の1切除例
石田 誠新本 修一出口 正秋飯田 敦木村 俊久藤沢 克憲広瀬 和郎関 弘明磯部 芳彰山口 明夫中川原 儀三
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キーワード: 肝嚢胞, 胆管炎
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1994 年 55 巻 10 号 p. 2635-2639

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抄録

症例は57歳の男性.近医で超音波検査にて偶然,肝内側区域に6cm×5cmの肝嚢胞を指摘された. ERCP施行後より発熱と黄疸を認めたため,当院紹介され入院となった. CTおよび超音波検査にて液面を形成する肝嚢胞と,外側区域胆管の著明な拡張を認めたため, PTCDおよび嚢胞穿刺を施行した.嚢胞内液は白色乳状で細菌や寄生虫を認めず,成分分析ではほとんどがリン酸カルシウムであった.嚢胞造影にて肝内胆管と交通を認め,胆管造影および血管造影にて左肝管と門脈左枝の狭窄を認めたため,肝左葉切除を施行した.組織学的に嚢胞壁は著明な線維化と炎症細胞の浸潤からなり,線維化は肝実質や左肝管および門脈左枝にまでおよんでいた.
本症例は孤立性肝嚢胞が原因となり, ERCPを契機として胆管炎と黄疸を併発し肝切除に至ったことと共に,嚢胞内液が白色で石灰乳胆汁に酷似しており,臨床的にきわめて興味ある症例であると思われた.

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