日本臨床外科医学会雑誌
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高齢者 (80歳以上)胃癌切除例の検討
遠隔成績からみた外科治療上の問題点
大谷 吉秀戸倉 康之山藤 和夫高橋 哲也愛甲 聡貴志 和生藤井 俊哉勝俣 慶三
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1994 年 55 巻 3 号 p. 547-554

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抄録

高齢者 (80歳以上)の胃癌に対する外科治療上の問題点を明らかにする目的で,最近6年間に経験した胃癌切除例38例にっいて検討を加え,以下の結果を得た. 1) A領域の分化型癌が多く,早期癌が44%を占めた. 2) R2以上のリンパ節郭清が58%に行われた. 3) 治癒切除率63%でその3年生存率は74%であった. 4) 術後合併症は58%に認められ,肺合併症,精神障害の順に多かった. 5) 胃癌の再燃による在院死亡を3例 (7.9%) 認めた. 6) 遠隔成績では治癒切除後死亡例に他病死が多かった.これら他病死例では生存例に比べ術後合併症の頻度が高く,在院日数も有意に長かった.以上より,高齢者胃癌に対しては治癒切除を目指しながらも安全性を重視して,合理的なリンパ節郭清による縮小手術を基本とし,根治性の得られない進行癌症例では可及的に侵襲の少ない手術にとどめるべきである.

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