1994 年 55 巻 5 号 p. 1224-1227
症例は19歳の男性. 10歳頃より腹部膨隆と排便困難を自覚し,近医でpsycogenic constipationとして緩下剤の継続投与を受けていた.今回突然の下血と腹痛を繰り返し入院となり,大腸内視鏡検査で下行結腸からS状結腸にかけての虚血性大腸炎と診断された. 3カ月後も頻回の下血と狭窄症状の改善が得られないために,狭窄部を含めた結腸切除を行った.本症の発症因子として腸管壁内の微小循環障害が重要視されており,このため本症の発症は動脈硬化の合併が多い高齢者に多く,若年者発症はまれとされている.自験例は若年者発症であり,膠原病などの血管性病変の既往はなく,便秘の継続による腸管壁の循環障害が本症の発症につよく関与したと考えられた.