日本臨床外科医学会雑誌
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55 巻, 5 号
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  • 渡辺 洋宇
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1059-1071
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 椎木 滋雄, 中川 和彦, 佐々木 寛, 山下 裕, 湯村 正仁, 小谷 穣治
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1072-1076
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    分泌液中CEA測定の臨床的意義を明らかにする目的で,無腫瘤性乳頭異常分泌75病変を対象に検討し,以下の結果を得た.
    1) 分泌液中CEAがカットオフ値(400ng/ml)以上であったものは全病変の48%と高率であった. 2) CEAがカットオフ値以上で乳管区域切除を施行した単一乳管分泌20病変の組織診断は,非浸潤癌1,境界病変2,乳管内乳頭腫2,慢性炎症2,乳腺症13であった. 3) 潜血反応(-)であったものは全て乳腺症であり,乳管造影で著変のみられなかったものも全て乳腺症であった.なお,癌での潜血反応は(±)であった.
    分泌液中CEAは良性病変でもカットオフ値以上となることがあり,生検の適応決定には潜血反応,乳管造影の所見をあわせて考える必要がある. CEAがカットオフ値以上であった場合,潜血反応(±)以上,あるいは乳管像に異常のみられるもので乳管区域切除の適応とするのが妥当と思われる.
  • CA15-3, NCC-ST-439, BCA225およびCEAの比較検討
    塩崎 滋弘, 神原 健, 軸原 温, 毛利 亮, 石川 隆, 大野 聡, 岡信 孝治, 檜垣 健二, 小林 直広, 池田 俊行, 岡村 進介 ...
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1077-1082
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌症例に対しCA15-3, NCC-ST-439, BCA225, CEAを測定し,腫瘍マーカーの臨床的意義を検討した.原発乳癌では,陽性率は11~14%であり,病期が進行するにつれてその陽性率は高値を示したがStage I, IIでは陽性率は低くスクリーニングとしては不十分と考えられた.乳癌術後再発例では非再発例に比べ,各腫瘍マーカーとも高い陽性率を示した.再発確診時の腫瘍マーカーの陽性率は肝,骨では高値であり,リンパ節,皮膚胸壁では低値であったが,各腫瘍マーカーの臓器特異性は明らかではなかった. Combination assayにより再発乳癌の陽性率はより高値となり,腫瘍マーカーの測定は術後のモニタリングとして非常に有用と考えられた.とくにCEAとCA15-3はその陽性率が66.0%と最も高値であり,また相関性も低くよい組合せと考えられた.
  • 渋谷 進, 高瀬 靖広, 河島 孝彦
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1083-1087
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    硬化療法後の腎機能障害の原因の1つとして,硬化剤にて溶血した遊離ヘモグロビンが考えられる.そこで,今回,硬化療法後の溶血を総ヘモグロビン,遊離ヘモグロビンおよび遊離ハプトグロビンの変動から検討した.対象は静脈瘤内注入群7例と組織内注入群6例である.静脈瘤内注入群では治療1時間後の血中総ヘモグロビン値および遊離ヘモグロビン値は治療前に比べて,有意に増加したが,とくに遊離ハプトグロビン値が低値である場合には遊離ヘモグロビン値が増加した.一方,組織内注入群では治療後の血中総ヘモグロビン値,遊離ヘモグPビン値および遊離ハブトグロビン値は治療前に比べて,有意な変動がなかった.また,静脈瘤内注入群では硬化剤注入量と治療前後の血中総ヘモグロビン値の差に高い相関がみられた.そこで,静脈瘤内注入量が多量で,血中遊離ハプトグロピン値が低値である症例では,治療前または中にハプトグロピンを投与した方がよいと思われた.
  • 廣安 俊吾, 島 伸吾, 森崎 善久, 山岡 哲哉, 吉住 豊, 杉浦 芳章, 田中 勧
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1088-1093
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1. 当科に於ける肝硬変合併食道癌手術例は11例で,うち肺合併症5例 (45%), 縫合不全5例 (45%), 術後出血2例 (18%) を認め, 5例 (45%) が在院死亡した. 2. 術前検査成績による術後合併症発生の予測は,単独項目では難しいが,複数項目による総合判断である程度可能であることが示唆された. 3. 術式においては,胸壁前経路による再建および胸管を温存することが重要と考えられた. 4. 術後は,早期よりの経腸栄養と新鮮凍結血漿の大量投与が有用と思われた.
  • 近森 文夫, 高瀬 靖広, 深尾 立
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1094-1100
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    経皮経肝門脈造影(percutaneous transhepatic portography: PTP)を施行した胃静脈瘤38例を,噴門部静脈瘤(cardiac varices: Lg-c) 19例と穹窿部静脈瘤(fundic varices: Lg-f) 19例に分けて,門脈圧,肝性脳症の頻度,静脈瘤排血路の種類と頻度, 5% ethanolamine oleate with iopamidolを用いた硬化療法の治療効果について比較検討した.門脈圧は, Lg-c 348±36mmH2Oに比べて, Lg-fでは269±49mm H2Oと低く,肝性脳症の頻度は, Lg-c 0%に比べて, Lg-fでは32%と高かった. Lg-cの主要排血路は全例食道静脈瘤であったのに対して, Lg-fの主要排血路は, 84%が胃-腎静脈シャント, 16%が胃-心嚢・横隔静脈シャントであった.硬化療法による胃静脈瘤消失率は, Lg-c 95%に比ぺて, Lg-fでは7%と低率であった.以上から, Lg-cには硬化療法が適応となるが, Lg-fにはシャント血流を制御した治療法が妥当と思われた.
  • とくに術中損傷防止の問題点
    上田 順彦, 小西 一朗, 広野 禎介, 藤田 秀人, 佐藤 貴弘, 長森 正則, 瀬川 正孝, 黒阪 慶幸, 鎌田 徹, 草島 義徳
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1101-1108
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    過去9年4ヵ月の間に当科で経験した異所肝管症例を対象として,その術中損傷防止の問題点について検討した.異所肝管の発生頻度は全胆摘術976例中8例 (0.82%) で,久次分類(一部改変)による型別の例数と頻度は1型3例 (38%), HI型2例 (25%), IV型1例 (13%), V型2例 (25%) であった.異所肝管の型や径と術中損傷の有無とは関係はなかった.損傷した2例の術前画像診断方法はDICであったことより,術前の直接胆道造影による胆道の走向形態の把握の重要性が示唆された.またCalot三角部の炎症の程度と術中損傷の有無とは関係はなかったが,損傷した2例の術式は胆嚢管を仮結紮したのちに順行性に胆嚢を摘除する混合性胆摘術であった.混合性胆摘術を含めた順行性胆摘術は必ずしも安全な方法ではなく,術式の如何をとわず術中の細心の注意こそが異所肝管の損傷防止にもっとも重要であると考えられた.
  • 木村 文夫, 諏訪 敏一, 林田 和也, 篠田 徳三, 佐藤 忠敏, 矢部 正治, 斉藤 毅, 沖 彰, 佐野 義明, 柿崎 真吾
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1109-1114
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝切除を施行した転移性肝癌症例21例について,術前に施行された超音波断層像(US), CT, MRI,血管造影(AG)の所見と切除標本の肉眼的転移巣を比較検討した,原発巣は結腸癌が最も多く8例,直腸癌7例,胃癌6例であった.切除標本で認められた肉眼的転移巣は全体で56病変であった.多発転移を示した9例の転移巣数はMedian 3個(Range, 2~16個)であった.全転移巣の腫瘍径はMedian 15.0mm (Range, 1~130mm)であった.腫瘍径9mm以下の病変はいずれの検査でも描出されなかった. 10mm以上, 19mm以下の病変に対するMRIの描出率は25%で, US, CT, AGの描出率はそれぞれ14.3%, 7.1%, 15.4%であった.腫瘍径が20mm以上の病変に対する描出率はMRIが100%, US, CT, AGはそれぞれ90.0%, 86.4%, 70.0%であった.
    術前検査の中ではMRIが最も勝れていたが,いずれの検査も偽陰性が非常に多かった.
  • 蒲池 浩文, 中島 保明, 佐藤 直樹, 松岡 伸一, 三澤 一仁, 神山 俊哉, 嶋村 剛, 富岡 伸元, 宇根 良衛, 内野 純一
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1115-1118
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌の診断上,血管造影における腫瘍濃染像は重要な所見であるが,腫瘍濃染陰性の肝細胞癌も散見され診断が困難なことがある. 1987年9月より91年9月までの4年間に当教室で経験した肝細胞癌切除症例は113例で7例 (6.8%) が血管造影上腫瘍濃染が陰性であった.血管造影上腫瘍濃染陰性の肝細胞癌は小型で高分化型が多いと言われているが,われわれの症例では7例中5例が最大径3cm以下の中分化型, 2例が最大径5cm以上の未分化型肝細胞癌で,最大径3cm以下でも必ずしも高分化型が多くないこと,また5cm以上では未分化型が多いという結果であった.また未分化型肝細胞癌は組織学的には腫瘍内血洞が未発達であること,浸潤性発育の形式をとり被膜の形成が認められないことが血管造影上腫瘍濃染陰性の原因と考えられた.
  • 佐藤 四三, 中島 晃, 中尾 篤典, 河島 留一, 甲斐 恭平, 青山 正博, 川真田 修, 森 隆, 鍋山 晃, 岡田 康男
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1119-1123
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術を完遂するには臨床解剖を把握することが必要不可欠であり,とくに胆嚢動脈の走行を知ることは重要である.われわれは腹腔鏡下に胆嚢摘出術を行う場合の動脈処理の観点より胆嚢動脈の解剖に関して検討を行った.
    胆嚢動脈処理の視点より,胆嚢動脈は, 9型に分類でぎた. Michelsの胆嚢動脈解剖との比較検討では,各型の頻度はほぼ同様の結果を得た.
    胆嚢動脈を処理する際に,“長い胆嚢動脈”では手技的に容易であるが,“短い胆嚢動脈”では特に胆嚢寄りで処理することが安全であった.また胆嚢管に並走する動脈の処理には慎重な操作が必要であった.さらに動脈処理をしても,別の動脈の存在を念頭におく必要があった.
  • 中島 清一, 宗田 滋夫, 吉川 幸伸, 籾山 卓哉, 戸田 宏一, 澤井 勉
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1124-1130
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    当科において成人鼠径ヘルニアの術前検査として1992年5月より1993年5月までの1年間に施行したヘルニオグラフィー26例をその後施行した手術所見により再評価を行った,その結果,同法は従来身体所見にのみ基づいて診断されてきた成人鼠径ヘルニアに対する客観的評価法として極めて有用であり,正確な病型診断のみならず対側の情報,重複ヘルニアや再発ヘルニアの情報などをも提供するものであることが示された.また,同法に伴う合併症の発生頻度は充分に低く,手技も比較的容易でコストも低いなど成人鼠径ヘルニアの臨床において極めて実際的な検査法であると思われた.同法を施行するに当たっての留意点,工夫や禁忌,当科において行っている用指による透視下でのヘルニア嚢の走向の確認などについても報告し,若干の文献的考察を加えた.
  • 日下部 輝夫, 森 秀樹, 前田 隆, 高橋 望, 津嶋 秀史
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1131-1136
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ASA (米国麻酔学会) class 1~2, 年齢6~20歳で,下腹部及び下肢の手術を脊椎麻酔下に受けた患者370名を逆行性に抽出した.薬液はネオペルカミンS®にアドレナリンを添加したものを,年齢,身長,体重などを考慮し,総量0.5~2.0mlの範囲で使用した.穿刺部位はL2-3, L3-4, L4-5間のいずれかで,穿刺針は21ゲージ金属針を用い,注入30秒後に仰臥位とした.脊椎麻酔の効果はピンプリックによる最高皮膚分節麻酔域を判定し,麻酔高と,年齢・性別・身長・体重・注入量が,如何に関与しているかを検索した.その結果,比較的相関係数の高かったのは,身長と体重であり,10歳以下では穿刺部位を低く(L3-4, L4-5)し,かつ,注入量を少なくしたことが高位脊椎麻酔とならなかった理由であったと考える.
  • 高原 秀典, 曲渕 達雄
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1137-1142
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者腹部緊急手術症例に対し2つの異なる麻酔法(全身麻酔および持続脊椎麻酔: CSA) を用いて術後合併症の比較検討を行った.対象症例はすべて80歳以上のイレウスとし,全身麻酔群10例, CSA群13例であった.年齢,手術時間,術中の水分バランスに関して両群間に有意差は認められなかった.術後合併症は循環器系が最も多く,全身麻酔群で60.0%, CSA群で38.5%であった.次いで呼吸器系合併症が多く,発生率は全身麻酔群で30.0%, CSA群では1例もみられなかった.また,術後の動脈血液ガス分析の結果, PaO2は全身麻酔群ではCSA群に対し有意に低下した.肝機能に関しては全身麻酔群では術後, GOT, GPT値が上昇傾向を示した.以上の結果から, CSAは全身麻酔に比べて生体に及ぼす影響が少なく,術後合併症,特に呼吸器系合併症発生率は低く,高齢者の緊急手術時には有用な麻酔方法であると考えられる.
  • 内山 雅之, 沢田 俊夫, 斎藤 幸夫, 渡辺 聡明, 篠崎 大, 樋口 芳樹, 武藤 徹一郎
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1143-1148
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大腸以外の疾患に対する手術を目的として入院した症例に対し便潜血テスト (RPHA法)を施行し,陽性例を中心に検討を加えた.
    1990年1月から1991年12月までの2年間の東京大学第1外科入院患者は817例であり,大腸疾患以外で入院した患者は599例であった.このうち72%, 434例に便潜血テストが施行された.陽性例は28例で,陽性率は6.5%であった.陽性例中,大腸癌3例,大腸ポリープ2例が発見された.大腸以外の疾患で入院した599例中3例 (0.50%) に大腸癌が発見されたことになる.この癌発見率は,一般の大腸集団検診のものより高率である.したがって,大腸疾患以外で入院した一般患者の中にも一定の割合で大腸癌,大腸ポリープの患者が含まれているリスクがあることを念頭におき,積極的に便潜血テストを施行することが重要と考えられた.
  • 作左部 大, 小玉 雅志, 小山 研二, 尾形 直人, 江本 彰二
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1149-1152
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性第刈因子欠乏症は1953年Rosenthalらによって初めて報告された常染色体劣性遺伝のまれな疾患である.本邦では40数家系が報告されているが,その手術報告例は少ない.今回,われわれは,術前に出血傾向を示さなかった70歳男性の先天性第XI因子欠乏症 (XI因子活性1%以下)の胃癌症例に対し,術前に新鮮血および新鮮凍結血漿の補充 (25ml/kg相当)により術中のXI因子活性を50%以上に維持, 2群リンパ節郭清を伴う胃亜全摘術を施行した.術後は7日間,新鮮凍結血漿による補充 (5ml/kg)を行い, XI因子活性を30%程度に維持した.これにより,術中術後に出血傾向はなく,術後経過は良好で,術後合併症は認められなかった.
  • 桐山 正人, 松下 昌弘, 秋山 高儀, 冨田 冨士夫, 喜多 一郎, 高島 茂樹, 松能 久雄, 武川 昭男
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1153-1157
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    神経線維腫症に合併した原発性副甲状腺機能亢進症の稀な1例を経験したので報告する.患者は31歳,女性で,腰痛・股関節痛を主訴に来院した.現症では体表面にcáfe-au-lait spotと多発性の神経線維腫を認め,同時に頸部右側に拇指頭大で表面平滑,弾性軟,辺縁明瞭な腫瘤を触知した.検査所見では血清カルシウムの上昇,リンの低下,アルカリフォスファターゼ,および副甲状腺ホルモンの著明な上昇がみられた.画像診断では右側下部の副甲状腺腫瘤が示唆され,骨X線像で骨盤・大腿骨の骨膜下吸収像がみられた.以上より,神経線維腫症に合併した副甲状腺機能亢進症と診断し,副甲状腺腫瘤切除術を施行した.組織学的には副甲状腺腺腫の診断が得られた.副甲状腺機能亢進症と神経線維腫症との合併は非常に稀ではあるが,多内分泌腺腫瘍との関係を示唆する報告もあり,貴重な症例と考えられたので報告した.
  • 天白 宏典, 石田 亘宏, 河村 勝弘, 太田 正隆, 安藤 芳之, 清水 武, 岡林 義弘
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1158-1162
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で白内障のため眼科を受診したところ,左前頸部の軽度膨隆を指摘され,当科へ紹介され入院となった.一般検血,血液生化学検査,甲状腺機能検査で異常を認めず,超音波検査, CT検査で左前頸部に上縦隔にまで及ぶ嚢胞を認めた.左上皮小体嚢胞を疑い手術を施行するも嚢胞は甲状腺と強固に癒着しており甲状腺との剥離は困難であり,嚢胞は甲状腺より発生したものと思われたため,嚢胞を含め甲状腺左葉切除術を行った.嚢胞内容液は無色透明で約50ml, PTHは10ng/mlと高値を示した.病理組織所見は,一層の立方上皮に囲まれた嚢胞で,嚢胞壁に小型円形核と明るい胞体を有する細胞を認め, PTH染色にて染色されたことより上皮小体嚢胞と診断した.
  • 鍋田 光一, 足立 孝雄, 渡部 芳樹, 佐藤 均, 岡崎 亮, 岡崎 稔, 浅石 和昭, 平田 公一, 成松 英明
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1163-1166
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺のアポクリン癌は稀な疾患であり,その発生頻度は1%以下とされている.最近,われわれは乳腺アポクリン癌の3例を経験したので報告した.症例は40歳, 64歳, 73歳の女性で,術前に穿刺吸引細胞診にてアポクリン癌と診断された.全例非定型乳房切除術を施行した.術後経過は著変なく,良好である.
  • 鈴間 孝臣, 三好 新一郎, 前部屋 進自, 平井 一成, 吉増 達也, 内藤 泰顯, 西野 栄世
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1167-1172
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な乳腺紡錘細胞癌の2例を経験した.症例1は55歳女性で,左乳房に10×12cm大の腫瘤を認め左定型乳房切断術を施行した.病理組織学的に紡錘細胞癌と診断した.紡錘細胞の免疫組織染色ではCEA, EMA, ケラチンが陽性であった.病理病期はT4 nomoで1年8ヵ月後両肺転移で死亡した.症例2は86歳女性で右乳房に8×8cm大の腫瘤を認め右非定型乳房切断術を施行した.病理組織学的には,上皮様成分を確認できなかったが,紡錘細胞の免疫組織染色にてCEAが陽性であったことより紡錘細胞癌と診断した,病理病期はT3 nomoで術後3カ月再発はない.自験例を含む本邦報告例53例を集計し,特に免疫組織染色施行症例について若干の対献的考察を加えた.
  • 矢野 公一, 中西 浩三, 岡林 寛, 吉田 泰憲, 白日 高歩
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1173-1176
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    術前,術中,胸腺腫と診断したが,術後の病理標本にて, Castlemanリンパ腫と診断された症例を経験したので報告する.症例は38歳女性で全身倦怠感と,咳嗽,体重減少を主訴として来院した.胸部レントゲン写真, CT検査にて前縦隔に内部が均一で辺縁のなだらかな鶏卵大の腫瘍を認め,胸腺腫と診断し,左開胸にて腫瘍摘出術を施行した.術中の迅速病理標本にてThymomaと判断された.しかし,術後の永久標本による病理診断で, Castleman's tmmor (hyaline-vascular type) と診断された. Castlemanリンパ腫は,体幹のいずれにも発生し,現在もその成因について統一された見解はなく,特に胸部については胸腺腫として扱われることが多い.本腫瘍を含めて術前,確定診断のために, enhanced dynamic CTを,今後積極的に利用する必要があると思われる.
  • 川崎 宗泰, 吉原 克則, 塩野 則次, 鈴木 直人, 堀越 淳, 徳弘 圭一, 小山 信彌, 高梨 吉則, 小松 壽
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1177-1180
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部仮性大動脈瘤は非常に稀な疾患である.本症の治療には厳密な術前診断が必要で,発生部位によっては,術中も内臓諸臓器の虚血を最小限にし,的確な手術が要求される. 40歳,女性,腹部刺創により腹腔動脈と上腸間膜動脈の間より発生した腹部仮性大動脈瘤に対し,軽度低体温併用下, intra aortic balloon pumping (以下IABP) 用バルーンカテーテルを用いて腹部大動脈を遮断し,瘤孔閉鎖を施行した.術中,術後は特別な合併症もなく経過良好に退院,社会復帰した1例を報告した.
  • 森 秀暁, 平山 哲三, 石川 幹夫, 石丸 新, 古川 欽一
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1181-1185
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道癌は,疫学的には消化器悪性腫瘍の中でも比較的高齢者発生が多い事や,手術遠隔期成績でも必ずしも満足のいく結果が得られていない.このため食道癌の術後に発症した心疾患に対し,開心術が必要となる症例はまれである.今回われわれは,食道癌術後の1年6カ月後に僧帽弁閉鎖不全症に対し,左側開胸によるアプローチで僧帽弁置換術を施行した症例を経験した.食道癌は術後遠隔期成績が他の消化器悪性腫瘍と比較しても不良であることが多く,術後に開心術等の侵襲の大きい手術が行われることは少ない.しかし今日では治癒切除を行い得た食道癌では,集学的治療法の進歩と相侯って術後遠隔期成績が向上しており,癌の再発が認められない症例で, quality of lifeの向上が期待される場合には積極的に合併症の治療も行うべきであると思われる.なお,最近では左開胸法で僧帽弁置換術が行われることはまれであるが,本症例では手術視野も比較的長好に保たれ,体外循環中は比較的循環動態も安定しており,術後良好な経過を得ることができた.癒着剥離に伴う危険性の回避や手術時間の短縮も期待できるため,症例に応じては左開胸法によるアプローチが有用であると思われたので報告した.
  • 太田 信吉, 浜崎 宏明, 泉田 弘行, 中郷 俊五, 蒔本 恭, 兼松 隆之
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1186-1191
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳女性でイレウスにて入院,イレウス管挿入と共に,左尺側皮静脈から上大静脈内に約50cmシリコンカテーテルを挿入し中心静脈栄養(以下TPN) にて加療した,輸液滴下が不良となった後,咳嗽,呼吸困難を訴え,さらに胸痛,頻脈,乏尿,急激な胸水の貯留を認めた.血液生化学検査では,血液の濃縮とLDH, CPKの上昇を認めた. TPNカテーテルに起因する肺塞栓症と診断し,カテーテル抜去とヘパリン投与,右心不全に対してDopamineとNitroglycerinの持続投与を行い, 6時間後より心拍数減少し,症状の改善を認めた.治療開始6日後には胸水の消失を認めた.ヘパリンの投与終了後はDipiridamoleを経口投与し,再発は認めていない.肺塞栓は致命的な合併症となりうるもので, TPN施行中は肺塞栓症について念頭に置く必要があると思われた.
  • 渡辺 透, 池谷 朋彦, 高橋 英雄, 魚津 幸蔵, 長谷川 洋, 関川 博
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1192-1196
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢摘出後に発生した肝塞栓症の1例を経験したので報告する.症例は64歳男性.胆嚢摘出術の第2病日早朝,胸部不快感を訴え,顔面蒼白状態になった.動脈血ガス分析でPaO2 56.4mmHgと低酸素血症を示した.理学的所見などより肺塞栓症を疑って肺シンチグラムを施行し, perfusion defectの所見が得られたため,直ちにウロキナーゼ48万単位/日,ヘパリン1万単位による血栓溶解療法を行った. 3日後には動脈血ガス分析の値も改善し,症状も軽快した.術後肺塞栓症は欧米での発症頻度は高く致死率も極めて高い.本邦での発症は比較的稀であるが今後食生活の欧米化に伴って本症の発生率の増加が予想される.本症は早期発見,早期治療が予後を大きく左右するため術後管理では本症を合併症の1つとして常に念頭においておくことが重要と思われた.
  • 高橋 英治, 三浦 拓也, 南 俊之介, 竹村 政通, 中村 正廣, 李 鐘甲, 田中 知徳, 黒住 和史
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1197-1200
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    成人の肥厚性幽門狭窄症は稀な疾患である.最近,当科にて成人の肥厚性幽門狭窄症の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.
    症例は76歳,男性.嘔気,嘔吐を主訴として来院した.胃透視では幽門管の延長及び狭小化を認め,胃内視鏡では,幽門の狭窄を認めた.保存的治療では症状の改善なく,手術を施行した.術中幽門部は約3cmに渡り,幽門部筋層の肥厚を認めたため幽門側胃切除術を施行した.病理所見では内輪筋の肥厚を認めるのみで,粘膜下に炎症細胞の浸潤はなく,潰瘍や悪性所見は認められず,成人の肥厚性幽門狭窄症と診断した.
  • 小池 祥一郎, 安達 亙, 小林 克, 宮本 英雄, 黒田 孝井, 飯田 太
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1201-1205
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    早期食道癌根治術後9年を経過して発生した再建胃管癌の1例を経験した.症例は72歳の女性で, 9年前食道癌に対して右開胸開腹,胸部食道全摘,胸骨後経路にて胃管による再建を行った.近医で経過観察されていたが嚥下困難,体重減少を主訴に当科へ紹介された.諸検査により,再建胃管下部に癌が発見された. CT検査にて胸骨への浸潤が強く疑われたため,胸骨の一部を腫瘍とともに合併切除し再建胃管を損傷することなく全摘した.再建は右半結腸を用いて胸骨後経路で行った.病理診断はBorrmann 2型癌,中一高分化型腺癌,深達度seでリンパ節転移はなく, stage IIIであった.胃管切除後2年経過した現在,生存中である.再建胃管癌は年々報告が増加しつつあるが,治療成績は不良であり,早期発見,予後向上のためには内視鏡検査による定期的な経過観察が必要である.
  • 内田 智夫, 玉川 英史, 深見 博也, 山本 裕, 植田 正昭
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1206-1210
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    十二指腸憩室の穿孔はまれな疾患で,欧米では100余例,本邦では12例の報告をみるに過ぎない,最近われわれは十二指腸憩室穿孔の1例を経験したので報告する.
    症例は41歳の女性.上腹部痛と発熱を主訴に来院.腹部CTで腎上前部と十二指腸背面との間に遊離ガス像を伴う低吸収性塊状病変を認め,後腹膜腔蜂窩織炎の診断で開腹術を施行した.病変は十二指腸下行部中央後壁の径約2cmの穿孔した憩室と,それを囲む後腹膜膿瘍によるものと判明した.憩室を十二指腸壁を含めて切除したが,その切断端は単純縫合閉鎖を避け, Roux-Yによる挙上空腸との端側吻合により処理した.術後経過は良好で合併症もなく18日目に退院した.
  • 小川 健治, 勝部 隆男, 萬 直哉, 若杉 慎司, 三浦 一浩, 平井 雅倫, 渡辺 俊明, 成高 義彦, 矢川 裕一, 梶原 哲郎
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1211-1214
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,陥凹型早期十二指腸癌の1例を経験した.近年,早期十二指腸癌は増加しているが陥凹型は未だに極めて稀で,その本邦報告例はわずか15例にすぎない.そこで,その臨床病理学的特徴を明らかにする目的で,自験例を含めた16例について若干の検討を加えたので報告する.本症は男性に多く,平均年齢は63.6歳.半数は無症状で多くは下行脚に発生しており,その発見にはルーチンの上部消化管内視鏡検査における十二指腸下行脚までの観察が重要と考えられた.その治療は,隆起型に比べればリンパ節転移の頻度が高いため外科的切除が一般に行われてきたが,自験例はm癌と診断し,十二指腸部分切除術を行って良好な成績をえた.本症においても,縮小手術,内視鏡的治療などを積極的に試みるべきと考えている.
  • 伊佐 勉, 野村 謙, 照屋 剛, 草野 敏臣, 武藤 良弘, 山田 護
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1215-1219
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    小腸間膜から発生した巨大腹腔内デスモイド腫瘍の1例を経験した.症例は44歳の女性で,急速に増大した腹部腫瘤を主訴に来院した.腹部は膨満しており,臍部を中心に小児頭大の弾性硬,表面平滑で可動性不良な腫瘤を触知した.腹部CT, MRIおよび血管造影等の画像診断にて小腸間膜腫瘍と診断し,開腹手術を施行した.小腸間膜原発の腫瘤(約20×15×13cm, 3,730g)および約50cmの空腸とともに上腸間膜静脈浸潤部を合併切除,左大伏在静脈を用い血行再建を行った.病理組織学的にデスモイド腫瘍と診断され,フローサイトメトリーによる核DNA量定量ではdiploid patternであった.術後経過は良好で30カ月経過した現在,再発の徴候はみられていない.本症は良性疾患とされているが,局所再発率が高く死亡例の報告もあり,積極的な外科治療が必要であると思われた.
  • 吉田 和彦, 藤川 亨, 西田 雄, 串田 則章, 岡部 紀正
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1220-1223
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂原発性悪性リンパ腫の1例を経験したので報告する.症例は64歳の男性で右下腹部痛と発熱を主訴に来院した.身体所見では右下腹部に圧痛を認めたので,急性虫垂炎の診断で開腹した.虫垂は14×6×6cm大でソーセージ様に腫大し,虫垂間膜に2個の腫大したリンパ節を認めた.虫垂切除術とリンパ節切除術を施行した.病理組織所見ではびまん性リンパ腫大細胞型(LSG分類)と診断された.術後再発を来たしたので化学療法(ACOMP-Bleo)を施行したが術後6カ月で死亡した.
  • 市原 隆夫, 島田 悦司, 裏川 公章, 新海 政幸, 上田 隆, 長谷川 恭久, 黒田 浩光, 白野 純子, 神垣 隆, 植松 清, 岩越 ...
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1224-1227
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は19歳の男性. 10歳頃より腹部膨隆と排便困難を自覚し,近医でpsycogenic constipationとして緩下剤の継続投与を受けていた.今回突然の下血と腹痛を繰り返し入院となり,大腸内視鏡検査で下行結腸からS状結腸にかけての虚血性大腸炎と診断された. 3カ月後も頻回の下血と狭窄症状の改善が得られないために,狭窄部を含めた結腸切除を行った.本症の発症因子として腸管壁内の微小循環障害が重要視されており,このため本症の発症は動脈硬化の合併が多い高齢者に多く,若年者発症はまれとされている.自験例は若年者発症であり,膠原病などの血管性病変の既往はなく,便秘の継続による腸管壁の循環障害が本症の発症につよく関与したと考えられた.
  • 島田 英雄, 青木 明人, 金井 歳雄, 小野 崇典
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1228-1232
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    若年で発症した潰瘍性大腸炎の長期経過例に大腸癌を合併した1例を経験した.症例は26歳女性, 8歳時より下血があり潰瘍性大腸炎と診断され以後症状の再燃緩解のため入退院を繰り返していた.外来通院中,急激に腹部膨満が出現,緊急入院となった.注腸検査で横行結腸は完全に閉塞しており,潰瘍性大腸炎に伴う狭窄性変化によるものと判断した.イレウス状態は急速に悪化し緊急手術を施行した.手術は腹膜翻転部直上の直腸より上行結腸の約1/2を切除,人工肛門を造設した.術後の病理組織検査の結果,狭窄部は周囲にDysplasiaを伴う漿膜下に浸潤する大腸癌と判明した.
  • 同時性肝転移の可能性について
    坂本 啓彰, 木村 幸三郎, 小柳 泰久, 青木 達哉, 中島 厚, 加藤 孝一郎, 馬島 亨, 大野 正臣, 寿美 哲生
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1233-1238
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    S状結腸癌治癒切除後3ヵ月にて肝転移再発 (H3) を来し,その後も肝転移巣の急速な増大を認めた症例を経験した.術前及び術中所見にて肝転移は認めず,臨床的に異時性肝転移として扱われた症例である.しかし,同時性肝転移(微小肝転移)の可能性も考えられた為, CEA doubling time及び腹部CTの三次元立体構築より求めた肝転移巣体積より逆算し,手術時計算上直径1.2cm大の肝転移巣が存在した可能性が推察された.現在,肝転移巣の発見には,なお,診断能の限界がある.したがって,臨床病理学的及び生物学的悪性度等により肝転移の予測される症例については,同時性肝転移の可能性も十分考慮し手術直後より予防的肝動注および予防的門注などの十分な補助化学療法が必要であると思われる.
  • 鈴木 旦麿, 〓村 泰樹, 小林 進, 稲田 省三, 桜井 健司
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1239-1243
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大肝海綿状血管腫の自然破裂症例を提示した.さらに当科で過去12年間に肝海綿状血管腫で肝切除術を施行した11症例を検討し,画像による鑑別診断および手術適応について考察を加えた.男女比は6:5で,平均年齢は49歳であった.最大径の平均は10cmで,巨大血管腫例が大半を占めた.上腹部痛などの自覚症状を5例に認めたが,健診で発見された症例2例を含む6例は本症に関連した症状が全くなかった.全例に血管造影を行い, 2例に非典型的なhypovascularな所見を認めたが,これらの症例を含めMRIが鑑別診断の上で有用であった.画像診断法の発達により,必ずしも侵襲的な血管造影の必要性はないと考えられた.肝切除術の安全性が向上しており,破裂時の死亡率が高いことから,無症状でも最大径10cm以上で肝表面に近いものや,広範囲に突出しているものは現時点では手術適応とすべきであると考える.
  • 森浦 滋明, 池田 修平, 池澤 輝男, 内木 研一, 酒井 隆, 横地 潔
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1244-1247
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝膿瘍胆嚢瘻はまれな病態であるので報告する.症例は75歳男性でイレウスのため入院した.手術所見は3cm長の回腸壊死による6cm径の膿瘍であった.術後,全身状態は良好であったが発熱,白血球増多を認めた.術後1カ月のComputed Tomographyで肝前区域に8cm径の膿瘍を認め,超音波下ドレナージを施行した.ドレン交換時に膿瘍から胆嚢への瘻孔が造影され,胆嚢摘除術と瘻孔からの膿瘍ドレナージ術を施行した.肝膿瘍の原因は腹腔内膿瘍に起因した(経門脈性)のか,胆嚢炎が肝へ穿破した(直接性)のかは不明であった.
  • 高濱 誠, 山崎 元, 桑田 圭司, 山崎 芳郎, 藤田 恒憲, 山口 高広, 小林 晏
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1248-1252
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳女性. 4年来肝塵胞として経過観察中であったが,画像上嚢胞内腫瘍の増大を認めた.肝S2に径3.2cmの不均一な充実性腫瘤を伴う嚢胞を認めた. 1992年8月11日肝左葉外側区域切除を施行した.腫瘍内は単胞性で殆どが凝血塊で占められており,一部嚢胞壁に充実性部分を認めた.病理組織診断では肝内胆管由来のmucinous cystadenomaであった.術後10カ月の現在再発の徴候はなく現在経過観察中である.
    単房性の肝嚢胞腺腫の本邦での報告例は4例と稀で,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 斎藤 人志, 後藤田 治公, 高島 茂樹, 松能 久雄, 久藤 豊治
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1253-1259
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    比較的稀な原発性肝嚢胞腺癌の1例を経験したので報告する.
    患者は, 71歳,男性.心窩部痛を主訴に来院.来院時所見は,黄疸,貧血はなく,腹部では心窩部に圧痛と軽度の抵抗を認めた.血液検査成績では,白血球増多以外に生化学的に異常はなく,腫瘍マーカーも正常値を示した.腹部超音波およびCT検査では,左肝内胆管外側下行枝に乳頭状隆起を伴う嚢胞性病変がみられた.穿刺細胞診ではClass IIであった. PTCおよびERCPでも同部に部分的嚢状拡張が確認された.肝内胆管原発の嚢胞腺癌を疑い,リンパ節郭清を含む,拡大肝左葉外側区域切除術を施行した.摘出標本では,左肝内胆管外側下行枝に最大径1.8cmの乳頭状隆起を伴う多房性嚢胞性腫瘍があり,組織学的には,嚢胞壁の大部分は粘液型嚢胞腺腫からなり,一部に漿液型嚢胞腺腫および腺癌の混在が認められた.術後2年5カ月経過の現在,再発徴候なく健在である.なお,原発性肝嚢胞腺癌の本邦報告は,これまで79例みられるが,これらを集計し併せて検討した.
  • 町田 浩道, 中谷 雄三, 小島 幸次朗, 神崎 正夫, 戸田 央, 鳥羽山 滋生, 小林 寛, 清水 進一
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1260-1264
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性無石胆嚢炎 (AAC) は重症患者の経過観察中に発症率が高いと言われてきた.しかし,最近では外来患者にいわゆるde novo型のAACが増加している.われわれも2例のde novo型のAACを経験したので報告する.
    症例1. 71歳の男性で上腹部痛,発熱,呼吸困難で来院.腹部超音波検査で腫大した胆嚢が描出されたが結石は認めなかった.胆汁性腹膜炎(多臓器不全の合併)と診断し胆嚢摘出, Tチューブドレナージを行った.術後一過性に人工透析を要した.
    症例2. 58歳の心疾患の既往がある男性で,右下腹部を主訴に来院.超音波検査で胆嚢壁肥厚と腹水を認めた.胆嚢摘出術を行った.
    2症例とも胆汁性腹膜炎を呈していた.摘出胆嚢内には胆石や胆泥等を認めなかった.組織学的には一部壊死を含む高度の炎症が存在した.
  • 岡信 孝治, 神原 健, 軸原 温, 石川 隆, 大野 聡, 塩崎 滋弘, 檜垣 健二, 小林 直広, 池田 俊行, 岡村 進介, 朝倉 晃 ...
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1265-1269
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    総胆管および肝内結石症の術前診断のもとに胆嚢摘出術および総胆管切開術を施行し,術中,摘出不能であった狭窄を伴う左肝管起始部より末梢の肝内胆管の遺残結石に対し, T-tubeよりexpandable metallic stent (EMS)を挿入して胆管狭窄部を拡張した後,電気水圧破石装置(EHL)を用いて遺残結石を破石し排出しえた1例を経験したので報告した.胆管狭窄を合併する結石症に対するEMSの使用は,単に結石の摘出を容易にするのみでなく,胆汁鬱滞を解消し結石の再発防止にもなりうるため,適応を選べば有効な治療法となる可能性が示唆された.また, EHLは,一般に硬度のあまり高くない総胆管および肝内結石の破石には非常に適しており,手術時に摘出困難な結石に対しても術後に繰り返し使用することにより破石排出が十分期待できることも示された.
  • 豊田 暢彦, 竹内 勤, 皆木 真一, 貞光 信之
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1270-1274
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは嚢胞液中のCEAおよびCA19-9が異常高値を示した粘液性膵嚢胞腺腫の1例を経験したので報告する.症例は79歳,男性.飲酒後の腹部膨満感を主訴として近医を受診した.超音波検査にて膵嚢胞を疑われ,当院紹介となった.膵尾部の多房性嚢胞と膵管の拡張を認め,膵嚢胞腺腫と診断し,膵体尾部切除を施行した.嚢胞液は透明な粘液であり, CEA, CA19-9はそれぞれ6.700ng/ml, 84,860U/mlと異常高値を示した.病理組織学的には膵癌と境界領域の粘液性膵嚢胞腺腫であった.一般に粘液性膵嚢胞腺腫は漿液性膵嚢胞腺腫に比し, malignant potentialが高いとされている.その臨床的対応については多くの問題をかかえているが,嚢胞液中のCEA, CA19-9は悪性で高値をとるとの報告もある.よって本症例の場合,悪性を十分に念頭においた術後の経過観察が必要と思われる.
  • 神谷 勲, 松崎 正明, 堀尾 静, 須田 賢
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1275-1279
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳女性,イレウス症状にて当院を受診した患者で,腹部触診で腫瘤を認め腹部X線でniveauを認めた.胸部X線では左胸部に2コ腫瘤陰影を認めた.イレウス治療目的で開腹術を施行し超手拳大の腫瘍を右季肋部と骨盤内に認めこれを小腸とともに摘出した.病理組織学的所見で良性の平滑筋腫と診断された.その後胸部の腫瘤の増大と痔痛を認めたため左後側方切開にて開胸し後縦隔腫瘍と左肺舌区の腫瘍を摘出した.これらも同様に平滑筋腫と診断された.そこで,本症例は15年前に子宮筋腫にて膣上部切断術を受けているので腹部,胸部の平滑筋腫はいわゆるbenign metastasizing leiomyomaであると考えられた.イレウス症状にて発見されたbenign metastasizing leiomyomaの報告は極めて稀であるので報告した.
  • 澤田 貴裕, 伊藤 重彦, 岡田 代吉, 出口 雅浩, 小林 誠博, 林 宗栄, 大江 久圀, 辻野 直之
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1280-1282
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    大網捻転症は比較的まれな疾患で,本邦では,検索した限り,過去に成人例で71例の報告があるのみである.閉鎖孔ヘルニアが原因と考えられた症例は本邦ではおそらく1例目と思われる.本疾患は術前診断困難でしばしば急性虫垂炎として手術される.術中血性腹水と炎症のない虫垂を認めた場合,本症を念頭に腹腔内精査を十分すべきと思われる.
  • 黒住 和史, 中村 正廣, 李 鍾甲, 高橋 英治, 竹村 政通
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1283-1287
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大な後腹膜神経鞘腫の1例を経験したので報告する.症例は65歳の女性で,腹部腫瘤を自覚し当院を受診した.他に自覚症状はなかった.屠から左側腹部にかけて, 20cm×15cm大の表面平滑で硬く,可動性に乏しい腫瘤があり,諸検査にて,腫瘍は後腹膜に存在する乏血管性で嚢胞変性を伴う充実性腫瘍であった.手術は開腹下に下行結腸左側より後腹膜へアプローチし,合併切除なしに腫瘍を完全摘除した.大きさは19×14×10cm, 重さは1.8kgであった.組織学的には良性神経鞘腫であった.後腹膜腫瘍の中で,良性神経鞘腫の発生は珍しいものではないが,このような巨大な例は珍しいと考えられた.
  • 松井 孝至, 別所 隆, 中安 邦夫, 里井 豊, 飯尾 宏, 米山 桂八
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1288-1292
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹膜中皮腫はまれな疾患でありその臨床像は不明な点も多くまた治療法も確立していない.今回われわれは右鼠径ヘルニアの手術の際に偶然発見された腹膜中皮腫の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
    症例は60歳男性.右鼠径ヘルニア術後の病理検索にて腹膜中皮腫と診断. 3カ月後の試験開腹にて腹膜全域に腫瘍結節を認め, CDDP 100mgを1クール, epirubicin 50mgを2クール, carboplatin 300mgを2クール腹腔内投与施行.その後腹水は抑えられていたが下腹部皮膚腫瘤,肝転移が出現し,発症後約1年3カ月にて死亡した.
    腹膜中皮腫は特徴的な所見に乏しく術前診断は困難とされる.また有効な治療法も確立していないため本例の様に治療に反応しながらも最終的には再発・転移等により死の転帰に至る症例が多い.今後有効な薬剤の開発により長期生存を増やすことが課題である.
  • 伊東 重義, 久保 章, 山内 毅
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1293-1296
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアはまれな疾患であり,再発の報告は少ない.われわれは閉鎖孔ヘルニアの再発を2回繰り返した症例を経験した.文献的考察を加え報告する.
    症例は69歳女性.昭和63年左閉鎖孔ヘルニア嵌頓のため,他院で手術を施行された.平成2年12月より左大腿部の激痛が出現するようになった.平成3年6月嘔吐,腹痛が出現し当科に入院した.イレウスの診断にて手術施行された.手術所見では,回腸が左の閉鎖孔に嵌頓していた.嵌頓を解除し,閉鎖孔周囲の腹膜を縫縮した. 2カ月後以前と同様の症状が現われたため,再発の診断のもとに手術が施行された.手術所見では前回の手術部位の腹膜がずれ再発したと思われた.
    本邦では閉鎖孔に対する術式として腹膜で閉鎖する例が多いが,再発の可能性が残ると考えられた.恥骨骨膜と閉鎖膜の直接縫合が望ましい方法と思われた.
  • 荻野 敦弘, 稲葉 征四郎, 近藤 雄二, 土屋 邦之, 川合 寛治, 梅田 朋子, 伊志嶺 智子, 上田 泰章
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1297-1300
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    イレウスの原因として子宮広間膜の異常裂孔に生じた内ヘルニアは極めて稀である. 58歳女性,絞扼性イレウスの診断で開腹術施行,術中所見で両側子宮広間膜に異常裂孔あり,回盲部より30~50CMの小腸が左側子宮広間膜の欠損孔に嵌頓していた.腸壊死を認めず用手整復,両側欠損孔の閉鎖を施行した.術後経過は良好であった.
  • 泉 純子, 渡辺 恒明, 榊 芳和, 阪田 章聖, 木村 秀, 須見 高尚, 増田 栄太郎
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1301-1304
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腰部ヘルニアは,本邦において自験例を含めて22例しか報告されていない稀な疾患であり,また再発症例の報告は今までにない.今回われわれは右上腰部三角に生じた再発性特発性腰部ヘルニアの1例を経験した.
    症例は63歳の女性,主訴は右腰部膨隆,3カ月前に腰部ヘルニアの診断にて局所麻酔下に手術を受けたが2カ月後に再発,当科にて, Petitの手術を施行しヘルニア門を閉鎖した.ヘルニア門はくるみ大で,内容は腸管と脂肪であった,術後右殿部にしびれ感があったが次第に改善し,術後6カ月現在再発はない.本症例では局所麻酔下の手術では不十分であったと思われた.本邦の報告例では,発生原因として特発性が一番多く,性差はみられなかった.好発部位は上下三角に差はなく,左側に多く見られている.治療法としては腰部ヘルニアは嵌頓を起こすことは稀であるが,拡大傾向にあるため,発見されしだい手術的に治療されている.
  • 塩見 尚礼, 阿部 元, 迫 裕孝, 長谷川 均, 石橋 治昭, 花沢 一芳, 谷 徹, 柴田 純祐, 小玉 正智
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1305-1308
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    壊死性筋膜炎は皮下組織・筋膜の壊死と二次性の皮膚壊死が急速に発症,拡大する感染症で早期診断,広範囲なdebridementが行われなけれぽ死に至る重篤な疾患である.今回2例の壊死性筋膜炎を経験したので報告する.症例1は60歳の糖尿病の男性.腎部糖尿病性壊疽で入院後症状が増悪,壊死性筋膜炎となり,広範囲debridementを施行した.症例2は45歳の男性.腹部外傷にて緊急手術後,正中創から側腹壁にかけ壊死性筋膜炎が発症,広範囲にdebridementを施行した.しかし壁側腹膜に炎症が波及し,救命し得なかった.
    また, 1989年から1991年の本邦での文献報告に自験例の2例を含めた28例につき集計し,若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 古川 聡, 吉見 富洋, 小泉 澄彦, 石塚 恒夫, 菱川 修司, 朝戸 裕二, 太田 岳洋, 小野 久之, 雨宮 隆太, 長谷川 博, 松 ...
    1994 年 55 巻 5 号 p. 1309-1312
    発行日: 1994/05/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脳室-腹腔短絡術 (V-Pシャント)を施行後に腹腔内へ迷入したV-Pシャントカテーテルが腹痛の原因と考えられ,その除去に際し3次元CT (3D-CT) 画像が有用であった1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は59歳男性. 1989年2月V-Pシャント術を施行した. 1991年3月カテーテル機能不全に対してシャソト再建術施行. 1992年5月腹痛が出現した.腹腔内へ迷入した古いV-Pシャントカテーテルが腹痛の原因と考えられた.
    3D-CTにより腹腔内でのカテーテルの走行,腹壁よりカテーテルへの最短到達経路が容易にわかるような3次元画像が得られた.術前にシミュレーション外科を実施した後,小さい皮切でカテーテルを除去し得た.
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