症例は72歳男性で, 1989年1月に閉塞性黄疸で発症した乳頭部癌に対し, R2のリンパ節郭清(左腎静脈周囲のリンパ節には肉眼的・病理組織学的に転移を認めず)を伴う膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的所見は, pat Acd, panc2, d3, n2, w0; stage IIIであった.術後約1年の1989年12月頃よりCA-19-9の再上昇,および腹部CT, US, Angio. で大動脈周囲リンパ節腫大を認め再発と診断し,他部位に再発所見を認めなかったため,初回手術後1年8カ月の1990年9月再手術を行った.手術所見では, No. 16a2 (lateroaortic), No. 16b1 (interaorticocaval) にリンパ節転移を認め,同部を含めた大動脈周囲リンパ節郭清を施行した.再手術後CA-19-9は正常化し,初回手術後4年9カ月の現在健在である.本症例は進行乳頭部癌における大動脈周囲リンパ節郭清の意義について,示唆に富む症例と考えられた.