骨盤内腫瘤を伴った直腸肛門部悪性黒色腫を1例経験したので報告する.
症例は55歳の女性.肛門部腫瘤を主訴に近医を受診し局所切除を行われ,直腸平滑筋肉腫と診断された.術後に下血が続いたため当院を受診.経肛門的に切除した残存腫瘍の病理組織学的検索で悪性黒色腫と診断した. 1年後局所再発と骨盤内腫瘍(リンパ節転移)を認め,腹会陰式直腸切断術,両側鼠径リンパ節郭清,骨盤内腫瘍切除術を施行した.
直腸肛門部悪性黒色腫は稀な腫瘍であり,極めて予後不良といわれているが,早期に確定診断を得られず痔核や肛門ポリープとして経過観察されている症例も少なくない.切除の機会があれば病理組織学的検索を行うべきである.また確定診断後には速やかに根治手術,すなわち両側鼠径リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術を行うべきであろう.