日本臨床外科医学会雑誌
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血友病Bを伴う胃癌の1切除例
鈴木 俊繁青野 高志加藤 英雄新国 恵也吉川 時弘佐々木 公一
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キーワード: 血友病B, 胃癌
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1996 年 57 巻 1 号 p. 48-52

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抄録

第IX因子製剤を併用した綿密な治療計画に基づく周術期管理により,合併症なく胃亜全摘術を施行し得た血友病B症例を経験したので報告する.症例は64歳,男性.高血圧,肝機能障害で通院中,上部消化管内視鏡検査で胃癌の診断を受けた.生検時に止血が困難であったため,出血性素因の検索が行われ,血友病Bと診断された.周術期の第IX因子活性値50~70%を目標に,手術9日前から第IX因子製剤の投与を開始し,胃亜全摘術を施行した.実際の第IX因子活性は50%未満にとどまったが,手術時の止血に問題はなかった.第IX因子製剤の投与は第14病日に中止したが,後出血等の合併症なく経過し,第19病日に退院した.
血友病の重症度評価が適切になされるとともに,綿密な治療計画をたてること,検査値のみに頼らず患者の状態を十分に観察することが重要である.

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