日本臨床外科医学会雑誌
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左下腹部痛で発症した腸回転異常を伴った急性虫垂炎の1例
加藤 憲治櫻井 洋至松田 信介鈴木 英明
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1996 年 57 巻 10 号 p. 2494-2498

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抄録

腸回転異常症は新生児期に上部消化管閉塞症状をきたして発見されるものがほとんどであり,小児外科の領域では重要な疾患である.一方,成人の腸回転異常症は稀な疾患であり,他疾患の検査,治療時に偶然発見されることも少なくない.今回われわれは腸回転異常を伴ったため術前診断が困難であった急性虫垂炎の1例を経験したので報告する.症例は66歳男性.左下腹部痛を主訴に来院. S状結腸憩室炎を疑い保存的に治療したが,腹痛の増強と腹部CTで左下腹部の腹壁直下に膿瘍を認め,消化管穿孔による腹腔内膿瘍の診断で手術を施行した.手術所見ではmalrotation typeの腸回転異常を認め,虫垂は左下腹部に位置し根部で穿孔しており,回盲部およびS状結腸と腹壁の間で膿瘍を形成していた.回盲部の炎症が高度なため回盲部切除を行い,腸回転異常に対してはLadd靱帯の切離を行った.

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