1996 年 57 巻 10 号 p. 2510-2515
症例は45歳の男性.人間ドックの腹部超音波検査にて肝腫瘍を指摘された.超音波では,境界明瞭な高輝度の腫瘍であり, CTでは高吸収域を有した低吸収域を呈し,血管造影では,濃染像として描出された.以上より肝血管筋脂肪腫(HAML)を強く疑うも,悪性腫瘍を否定できず,肝部分切除を施行した. HAMLは,肝良性腫瘍の中できわめて稀な疾患であり,本邦報告例は,われわれが検索しえた範囲内で,自験例を含めて54例に過ぎない.外科的切除を施行されている症例が多いが,近年,生検のみで経過観察される報告例も見られる.しかし,病理組織上,脂肪成分,血管成分,平滑筋成分の増生を特徴とする本疾患では,これら3成分および正常肝細胞の構成比率の違いにより,画像上,多彩な画像を呈しうる.このため,近年における画像診断の発展にもかかわらず,悪性疾患との鑑別は困難である症例もあり,治療方針決定の際には,注意を要すると思われる.