日本臨床外科医学会雑誌
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閉鎖孔ヘルニアの4例
岩崎 誠酒井 秀精
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1996 年 57 巻 10 号 p. 2546-2549

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抄録

最近5年6カ月間に経験した閉鎖孔ヘルニアの4例を紹介すると共に, 1990年以降の本邦報告73例と自験例4例の77例を集計し,最近の診断および治療成績と問題点について報告する.
自験例は全例入院2日以内に術前診断され,診断根拠は1例は過去の経験から本症を疑い,残り3例はHowship-Romberg徴候が陽性でうち2例は骨盤部CTで確定診断した.手術は全例腸管切除を要せず嵌頓腸管の整復と閉鎖孔の縫合閉鎖を行い,術後経過も良好であった.
今回の集計では術前診断率がCTやUSにより72.3%と向上していたが,腸管切除率は未だに55.8%と高率で,特に術中診断例は腸管切除率が85.7%と高く,重篤な術後合併症発生例や手術死亡例は全て術中診断例であった.
一方,術前診断例の腸管切除率も44.6%で,腸管切除不要例は殆どが入院2日以内に手術されていた.以上より,近年本症の術前診断率は向上したが,腸管切除を避けるには入院2日以内の早期診断・早期手術が大切と思われた.

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