日本臨床外科医学会雑誌
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乳癌の胃・後腹膜リンパ節転移の1例
竹之内 伸郎塩野 恒夫関下 芳明藤森 勝佐藤 兆昭宗村 忠信大竹 節之新関 浩人押切 太郎山口 潤加藤 紘之
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1996 年 57 巻 11 号 p. 2682-2685

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抄録
乳癌の消化管転移は剖検例での報告ではさしてまれではないが,日常臨床の場で遭遇することは極めてまれである.今回,乳癌根治術後に胃・後腹膜リンパ節に転移を認めた症例を経験したので報告する.症例は53歳,女性.左乳癌(t2n2m0 stage III)のため定型的乳房切断術を施行し術後放射線・化学療法を施行していた. 2年10カ月後に口渇感の訴えがあり,上部消化管の精査の結果胃体下部小彎にIIa+IIc様の病変を認め,生検で印環細胞癌と診断された.早期胃癌の術前診断で手術を施行したが,上腸間膜動静脈周囲および大動脈周囲リンパ節を中心とする後腹膜腔に転移を認めた.摘出標本の病理組織学的検索では胃粘膜には明らかな病変は認めず,粘膜下組織を中心に腫瘍の拡がりを認め,前回手術の乳癌組織と同様の所見であり,最終的に乳癌の胃転移と診断された.乳癌術後の患者で消化器症状を訴えた場合,乳癌からの消化管転移も念頭におくことが必要である.
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