1996 年 57 巻 11 号 p. 2742-2745
大腸脂肪腫は比較的稀な疾患であるとされてきたが,近年になり大腸検査の増加に伴い報告例も増加してきている.今回われわれは,腸重積にて発症した上行結腸脂肪腫の1例を経験したので報告する.
症例は56歳女性,数カ月間便秘と腹痛を繰り返していたがイレウス症状を来したため来院した. CTにて特徴的な同心円状の多層構造を右季肋部に認め腸重積と診断した.注腸造影にて蟹爪様陰影を認め,透視下にこれを整復後,約8×5cmの腫瘍を描出した.生検では確診は得られなかったがCT値は-78.8と脂肪組織の数値を示していた.
上行結腸切除術を施行した.組織学的には成熟した脂肪細胞よりなる脂肪腫(7.5×3.5×3.5cm)であった.