1997 年 58 巻 11 号 p. 2667-2671
比較的稀な背側膵動脈瘤の2例を経験した.症例1は53歳男性.献血時にHCV抗体陽性が判明したため,腹部超音波検査および上腸間膜動脈造影を施行した.背側膵動脈瘤が診断され,瘤切除術を施行した.病理組織学的には動脈壁内に動脈硬化性変化と膵組織の迷入を認めた.症例2は50歳女性.検診の腹部超音波検査で脾動脈瘤を疑われ,腹部血管造影を施行したところ背側膵動脈瘤を認め,瘤切除術を施行した.病理組織学的には動脈硬化の所見であった.
腹部内臓動脈瘤は全動脈瘤の4~5%を占め,うち背側膵動脈瘤は3%以下とされ,今回われわれが検索し得た本邦報告は自験例を加え5例であった.発生原因については,明確な見解は得られていないのが現状である.われわれの経験した2例のうち1例の動脈壁内に異所性の膵組織が認められた.このような報告はわれわれの調べる限りは他にはなかった.