日本臨床外科医学会雑誌
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下血で発症した肺癌小腸転移の1例
中坪 直樹山口 博紀佐藤 宗勝奥村 稔高橋 敦
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キーワード: 肺癌, 小腸転移
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1997 年 58 巻 12 号 p. 2904-2908

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抄録

原発性肺癌は,生物学的特性のみならず発生母地である肺組織構造の特異性のため他臓器に比べて遠隔転移をきたしやすい.転移臓器としては肺,肝,骨,腎,副腎,脳などの順に多いが,小腸への転移は比較的まれである1). 今回われわれは下血のため小腸切除を施行した肺癌小腸転移症例を経験した.
症例は54歳,男性で1993年2月に左B6原発の肺癌(rt〓U)に対し左肺全摘術(P-T2N2M0, stage IIIA)が行われた. 1996年5月より下血が出現し当科を受診した.高度の貧血が認められたため内視鏡検査を施行したが上部消化管,大腸に出血部位は認められなかった.小腸造影検査で空腸に狭窄所見が認められ転移性小腸腫瘍の疑いで手術を施行した.開腹するとトライツ靱帯より100から130cmの空腸間膜に径7cmの腫瘤を認めた.腫瘤は一部腸管壁を巻き込む形で存在していた.腫瘤を含め約40cmの小腸切除を行い端々吻合を施行した.組織学的には,中分化型腺癌であり,肺癌からの転移と診断された.文献上検索しえた肺癌の小腸転移巣を切除した症例を集計し臨床病理学的に検討を加えた.

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