1997 年 58 巻 3 号 p. 537-542
症例は64歳,女性.左乳房の腫瘤を主訴に受診した.腫瘤は2×2cm, 弾性軟,可動性良好で, US上は境界明瞭,辺縁滑らかで縦横比は小さかった.マンモグラフィーで腫瘤に一致したスリガラス状陰影を認めた.念のため生検を施行したところ,乳腺血管肉腫と診断された.全身検索にて転移のないことを確認した後,初診時から約2カ月後に単純乳房切断術を施行した.補助療法として術後3日目より3週間IL-2を点滴静注し,第26病日に退院した.術後10カ月の現在,再発の徴候はなく健在である.
本疾患は非常に稀で予後が悪く,本邦報告22例中, 5年生存例は見られない.転移形式は血行性が主でリンパ行性はほとんど認められない.長期生存を望める条件は,現段階では早期発見,外科的切除のみである.今回,偶然に発見され,長期生存が期待できる条件を備えた症例を経験したので,報告する.