1997 年 58 巻 3 号 p. 586-590
Granulocyte-colony stimulating factor (G-CSF)産生食道癌肉腫の1例を経験したので報告する.患者は63歳男性で全身倦怠感を主訴に某医受診, 130,000/mm3の白血球増多を指摘され当院血液内科にて精査,血中G-CSF 286pg/mlで食道Imに0-I型腫瘍あり, G-CSF産生腫瘍の疑いで当科を紹介された.胸部食道全摘,胸壁前頸部食道胃吻合を行い,術後病理診断はいわゆる癌肉腫でsm n (-) Pl0 M0, stage 0であった.腫瘍組織中任意の2点のG-CSF濃度(pg/g wet weight)は各々1,340,000, 1,310,000で非腫瘍部は30,400であり, recombinant human G-CSFに対するモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色で腫瘍細胞内にG-CSFの局在が証明された.術後挙上胃口側壊死のため遊離空腸間置により2次再建したが,その後白血球数,血中G-CSF共に正常化し, G-CSF産生腫瘍と診断した.