日本臨床外科学会雑誌
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下大静脈腫瘍塞栓を伴う腎細胞癌の外科治療
鹿島 康薫鈴木 一郎石川 堯夫桜山 由利西沢 直青木 靖雄白松 一安小林 純青柳 光生
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1998 年 59 巻 3 号 p. 636-641

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抄録

下大静脈内腫瘍塞栓を有する腎細胞癌に対し,根治的手術を施行した7例を対象にその外科治療につき検討を加えた.年齢は, 47歳から73歳(平均62.1歳),性別は男性5例,女性2例,腫瘍は右腎5例,左腎2例であった.下大静脈の閉塞症状は,下肢の浮腫を1例に認めた.本症の診断及び腫瘍塞栓の進展度の検索には, MRIが特に有用であった.手術は,静脈内腫瘍塞栓摘除術を含めた根治的腎摘除術およびリンパ節郭清を全例に施行し,うち5例には,下大静脈壁部分切除も施行した.腫瘍塞栓が肝静脈流入部より頭側に進展していた3例には体外循環を併施し安全に手術を施行し得た.生存は最長9年3カ月を含め1年9カ月, 7カ月の3例,死亡は全て癌死の4例で,累積5年生存率は21.4%であった,下大静脈腫瘍塞栓を伴う腎細胞癌に対しては,手術治療により病巣の完全摘除に成功すれば,長期生存が可能で積極的な外科切除が施行されるべきであると考えられた.

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