日本臨床外科学会雑誌
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後腹膜原発絨毛癌の1例
川口 富司木下 博之瀧藤 克也小林 康人上畑 清文
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キーワード: 絨毛癌, 後腹膜
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1998 年 59 巻 6 号 p. 1669-1673

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抄録

われわれは,後腹膜原発絨毛癌の1例を経験したので報告した.症例は32歳の男性で,心窩部痛と嘔吐を主訴に受診した.初診時,両側に女性化乳房があり,右季肋部に12×9cm大の表面平滑で圧痛のない弾性軟の腫瘤を触知した.胸部X線では,両肺野に大小多数の円形の転移を認め,腹部超音波および造影CTでは,腫瘍は中心壊死を呈しており,肝にも転移巣を多数認めた.以上より後腹膜原発の悪性リンパ腫を疑い手術を行ったが切除不能であり,針生検と胃空腸吻合術を行い,絨毛癌と診断した.術後化学療法を施行したが,術後16日目に吐血のため死亡した.
後腹膜原発絨毛癌は非常に稀な疾患で,本邦では20例の報告しかなく,術前診断が困難であるため予後は不良である.今回われわれは,本邦報告例を検討した結果,若い男性で後腹膜に腫瘍が存在し,すでに転移がありLDHが高値のときは, HCGを測定することで本症の診断が可能である事を報告した.

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