日本臨床外科学会雑誌
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早期直腸癌の手術術式の検討
馬場 信年秋山 弘彦亀田 彰大田 耕司向田 秀則平林 直樹久松 和史岩森 茂
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1998 年 59 巻 9 号 p. 2235-2241

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抄録

早期直腸癌46例を臨床病理学的に解析し,適切な早期直腸癌に対する外科的治療法について検討した.粘膜内癌(m癌)は22例であり, 10例に局所切除, 12例にリンパ節郭清をともなう直腸切除(直腸切断を1例含む)を施行したが, 22例,すべて脈管侵襲は認められず,12例,いずれもリンパ節転移はなかった.また,直腸切除例では, 12例中3例 (25.0%) で術後合併症を認めたが,局所切除例には合併症はなかった.以上より, m癌は局所切除が適応であると考えられた.一方,粘膜下層に浸潤する癌(sm癌)24例のうち, 6例に局所切除を, 18例にリンパ節郭清をともなう直腸切除(直腸切断を6例含む)を施行したが, 24例中10例 (41.7%) にリンパ管侵襲を認め,直腸切除例18例中5例 (27.8%) にリンパ節転移を認めた.そして局所切除6例のうち1例 (16.7%) に局所再発を認めた.リンパ管侵襲やリンパ節転移および局所再発を認めたのは,すべてsm中層以深に浸潤した例であった.以上より, sm癌,とくにsm中層以深に浸潤する例ではリンパ節郭清が必要であろうと考えられた.術前の深達度診断を正確に行うため超音波内視鏡検査 (EUS) を9例の早期直腸癌に施行したところ,術式選択に補助診断として有用であることが示唆された.

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