日本臨床外科学会雑誌
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進行大腸癌を合併した腹部大動脈瘤に対する一期的手術の1例
國友 隆二宇藤 純一平田 智美原 正彦北村 信夫
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1998 年 59 巻 9 号 p. 2271-2274

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抄録

腎動脈下腹部大動脈瘤と進行S状結腸癌を合併した症例に対し,一期的手術を施行した.本症例では再発肺癌も合併しており,手術時期を逸さない為にも一期的手術が必要であった.手術は,大動脈瘤切除・人工血管置換を先行させ,引き続き左半結腸切除術を施行した.グラフト感染予防策としては,術前十分なcolon preparationを行い,手術では汚染による感染防止のために人工血管置換後,後腹膜を特に密に閉鎖し,さらにガーゼで被覆してから結腸手術に移った.また,結腸切離時GIAを用い腸液による術野の汚染を防止すると共に,吻合開始まで腸粘膜が術野に露出しない様にした.術後経過はグラフト感染もなく順調であった.本症例は,たとえ下部大腸進行癌と腹部大動脈瘤が合併していても,グラフト感染予防に細心の注意を払えば,同一術野においても一期的手術が可能なことを示唆するものと考えられた.

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