1998 年 59 巻 9 号 p. 2424-2427
患者は62歳の男性で嚥下障害を主訴に来院した.上部消化管造影および上部内視鏡検査にて下部食道より噴門部にかけての2型の腫瘍とBorrmann 5型胃癌を認めた.内視鏡下生検にてそれぞれ扁平上皮癌と印環細胞癌と診断され,衝突癌を強く疑った.切除標本では下部食道より胃噴門部にかけての6.0×5.0cm大の2型の腫瘍と8.5×5.5cm大のBorrmann 5型胃癌とが食道胃境界部より2cm胃側の部位で相接していた.病理組織学的検査では食道扁平上皮癌と胃印環細胞癌とが薄い線維性組織で境され,互いに隣接しており,互いに交錯する像や移行像は認めなかった.転移巣においては互いに独立した組織像が存在した.