1999 年 60 巻 12 号 p. 3257-3261
気腫性胆嚢炎はガス産生菌を起炎菌とし,胆嚢内や胆嚢壁周囲にガス像を呈する比較的稀な疾患である.今回,胆管内および腹腔内遊離ガス像を伴った気腫性胆嚢炎を経験した.症例は腹部膨満感を主訴に当科外来を受診した81歳の男性.入院時眼球結膜の黄染と38度台の熱発を認めたが腹部に明らかな圧痛や筋性防御は認めなかった.腹部CT上,胆嚢は壁肥厚はないが,内部にガス像を伴ってniveauを形成しており,右横隔膜下と胆管内にもガス像を認めた.消化管穿孔の所見はなく気腫性胆嚢炎に伴う腹腔内および胆管内のガス像と診断し胆嚢摘出術を施行した.病理診断は壊疽性胆嚢炎で胆嚢内にはガスと膿汁を認めたが明らかな穿孔や結石はなく,腹腔内遊離ガスは胆嚢から滲出したものと考えられた.経過は良好で術後16日目に退院した.胆管内ガスや腹腔内遊離ガス像を伴う気腫性胆嚢炎は稀であり,文献的考察を加えて報告した.