日本臨床外科学会雑誌
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甲状腺の癌と良性病変におけるテロメラーゼ活性の検討
小野田 尚佳石川 哲郎小川 佳成池田 克実荻澤 佳奈須加野 誠治加藤 保之平川 弘聖
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2000 年 61 巻 1 号 p. 5-10

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抄録

テロメラーゼは,細胞の不死化に関与し,ヒト癌細胞において高率に活性が認められ,癌の診断や治療への応用が研究されている.甲状腺疾患手術症例47例(107検体)を対象とし,テロメラーゼ活性の定量的検討を行った.癌45病変中19病変 (42%) で活性が確認された.定性的検討では,臨床病理学的所見との間に関連を認めなかったが,定量的検討では高齢症例, PT3以上, pN1, pEX1以上, stage 3以上の症例,死亡例で,活性値は有意に高かった.良性の濾胞腺腫,非病変部で活性は認められなかったが,炎症細胞浸潤のみられた良性疾患や,担癌甲状腺の非癌部でも活性が認められた.以上より進行癌は高活性を示し,テロメラーゼ活性は再発,予後不良を予見する指標になるとともに,甲状腺腫瘍の術前補助診断としての応用が可能であると考えられた.さらに,テロメラーゼ活性測定は,甲状腺における癌化過程を考える上で興味深いと思われた.

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