抄録
総肝動脈の欠損を伴った後下膵十二指腸動脈瘤の1例を経験したので報告する.患者は72歳の女性,腰痛を主訴に来院.腹部単純X線検査で上腹部の2個の環状石灰化像とCA19-9値の高値が認められ入院した.動脈造影で総肝動脈が描出されず,固有肝動脈は左胃動脈から右胃動脈を介して描出された.上腸間膜動脈も根部で閉塞し,膵十二指腸動脈を介した血行で維持され,動脈瘤はこの部に認められ,後下膵十二指腸動脈瘤と診断した.大動脈-上腸間膜動脈バイパス造設後,動脈瘤を切除,病理組織検査では動脈硬化性動脈瘤と診断された.術後CA19-9値は正常化し,術5年後の現在,健在である.