日本臨床外科学会雑誌
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単純性肝嚢胞の腹腔鏡下開窓術後,嚢胞腺癌へ移行した1例
稲垣 均鳥井 彰人笠井 保志黒川 剛野浪 敏明立松 輝
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2000 年 61 巻 2 号 p. 448-452

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抄録
肝嚢胞液中, CA19-9, CEAが共に高値である場合, cystadenocarcinomaである場合が多い.今回,嚢胞液中CA19-9, CEAが高値であった単純性肝嚢胞に対し,腹腔鏡下開窓術を施行し,その6カ月後に嚢胞性腫瘍を再発し,切除の結果嚢胞腺癌であった症例を経験したので報告する.症例は57歳,女性.平成7年,検診にて肝S4に嚢胞を指摘される.平成9年1月,肝嚢胞の増大に対しエタノール固定を施行するも,平成9年6月に再び嚢胞が増大したため,腹腔鏡下開窓術を施行した.組織上嚢胞壁に悪性所見を認めず,単純性嚢胞であった.平成9年11月より血中CA19-9の上昇とともに肝S4に再び嚢胞性腫瘍を認めたため,平成10年2月愛知県がんセンターにて肝左葉切除を施行.組織診断はcystadenocarcinomaであった.本症例は肝嚢胞の癌化例と考えられ,経過観察の重要性と腹腔鏡下開窓術の手術選択の適応に関して重要な示唆を与えるものと思われる.
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