2000 年 61 巻 9 号 p. 2357-2361
症例は78歳男性.基礎疾患に閉塞性動脈硬化症,脳梗塞があった.総腸骨動脈の血行再建および血栓除去術後,血便,腹部膨満を主訴に当科紹介された.虚血性腸炎によるイレウスおよび腸管壊死を疑い,緊急開腹術を施行した.広範囲にわたる腸管壊死と多発性腸管穿孔を認めたが,血管は十分に開存しており,非閉塞性腸間膜虚血症 (nonocclusive mesenteric ischemia: NOMI) と診断し,広範囲小腸切除,大腸全摘術を行った.
NOMIによる消化管穿孔はまれであり,予後は極めて不良である. NOMIによる広範囲腸管壊死および多発性腸管穿孔の症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.