日本臨床外科学会雑誌
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腹部大動脈瘤術後9年目に発症した外腸骨動脈瘤小腸瘻の1例
平井 伸司濱中 喜晴三井 法真中前 尚久井坂 光宏小林 平
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2001 年 62 巻 10 号 p. 2552-2555

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抄録

症例は79歳男性.腹部大動脈瘤手術後9年目に間歌性下血を呈し精査中に, Y型人工血管置換部中枢側に約6cmの腹部大動脈瘤の再発を認めた.下血症状は消失し, I型人工血管術を施行した.腹部大動脈と腸管との間に瘻孔はなかったが,術後4日目に再度間欺性の下血症状が出現し,術後8日目には大量下血によるショック症状を呈し緊急開腹手術となった.骨盤腔内の癒着した小腸を剥離すると,Y型人工血管左脚の吻合部から約2cm離れた部位に外腸骨動脈瘤腸管瘻があり,手術にて救命できた.動脈瘤腸管瘻は下血の原因としては稀であるが,術前診断が困難であるだけでなく,手術時期が遅れると致死的となる.腹部大動脈瘤術後9年目に間歌性下血で発症したことで,診断に苦慮したが,早期診断のためには本疾患も念頭に置き精査する必要があると思われる.

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