2001 年 62 巻 11 号 p. 2617-2620
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma;以下, HCCと略記)の治癒切除施行49例を対象に術前の肝動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;以下, TAEと略記)施行例をA群(24例),非施行例B群(25例)の2群に分類し術前TAEの有用性を再発および長期予後に及ぼす効果から検討した.患者背景因子では,臨床病期ではA群においてII期のものが有意に多かった.病理学的因子では両群に有意差はなかった. 1年無再発生存率はA群76.3%, B群69.7%, 2年無再発生存率はそれぞれ31.8%, 41.3%, 3年ではそれぞれ34.4%, 25.4%で有意差なく,生存率でも, 1年累積生存率がA群91.1%, B群86.3%, 3年累積生存率はそれぞれ63.9%, 68.0%, 5年ではそれぞれ47.3%, 46.6%と両群間に有意差は認められなかった.以上から,術前TAEは治癒切除可能なHCCに対しては,再発,長期予後の点から有用性は低く,ルーチン化すべきでないと考えられた.