2001 年 62 巻 11 号 p. 2627-2630
術前検査にて先天性第XI因子欠損症と診断され,血漿交換により第XI因子補充を施行し周術期止血コントロールに成功した症例を経験した.症例は58歳男性,既往歴に止血異常はない.健診にて便潜血反応陽性を指摘され,精査にてS状結腸癌の診断を受け手術目的に入院した.術前凝固能検査にてAPTTの延長を認め,精査にて第XI因子活性が1.8%と低値を示し先天性第XI因子欠損症と診断された.術前血漿交換により第XI因子活性を35%にすることでS状結腸切除術の周術期に異常出血を回避できた.また本症例は術前禁食期間に直接ビリルビンの上昇を認め, Gilbert症候群を合併していた.先天性第XI因子欠損症は本邦では稀な疾患ではあるが,開腹手術に際しては術前血漿交換による第XI因子の補充が有用と考えられた.