抄録
常染色体優性遺伝嚢胞腎では腎臓を始めとして,肝臓,膵臓,脾臓などに多発性の嚢胞が生じ,腹腔内圧が亢進する.そのため階ヘルニアや鼠径ヘルニアが生じやすく,また術後に再発する例が多く,しばしば治療に難渋する.最近われわれは,臍ヘルニア再発2例および臍ヘルニア嵌頓1例の計3例の常染色体優性遺伝嚢胞腎症例に対して,鼠径ヘルニア修復術用に開発されたProlene® hernia system (PHS) を用いた手術を施行した. PHSはunderlay patchとonlay patchとがconnecterを介して一体となっており,脆弱化した腹壁を広く2重に補強できる.またconnectorが陥凹していることにより,臍部に窪みが生じる.さらにPHSはonlay patchにより,白線ヘルニア発症の予防も期待できる.自験例ではいずれも臍ヘルニアの再発は認めず,また臍部に窪みがあり,患者からも満足されている.