2001 年 62 巻 7 号 p. 1701-1705
キックスケート(車輪付きデッキ,シャフト,ハンドルバーから構成される遊戯具)による肝損傷で病院前心肺停止状態(CPA-OA)となり救命しえなかった症例を経験した.症例は, 9歳,男児,同遊戯具で走行中転倒しハンドルバーで右側胸部を強打.救急隊現場到着時,不穏状態で呼名に反応せず,血圧測定不能,搬送途中呼吸状態,意識レベル悪化,受傷後約30分で当センター到着, CPA-OAであった.腹部は軽度膨隆,右肋弓に6mmの圧挫痕を認めた.急速輸液,開胸心臓マッサージにより蘇生に成功した.肝破裂と腹腔内出血の増加,血液凝固異常,著しいアシドーシスを認めた.胸部下行大動脈遮断し,救急通報後78分,搬送後46分で緊急手術を施行した.肝右葉の深在性の複雑な破裂損傷に対しperihepatic packing,右肝動脈,門脈右枝結紮術を施行,集中治療室へ入室したが受傷後約15時間で死亡した.