日本臨床外科学会雑誌
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アカラシアとの鑑別が困難であった下部食道固有腺癌の1例
鈴村 潔山口 晃弘磯谷 正敏原田 徹金岡 祐次鈴木 正彦
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2001 年 62 巻 8 号 p. 1872-1877

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抄録

アカラシアとの鑑別診断が困難であった下部食道固有腺癌の1例を経験した.症例は42歳の女性で,主訴は嚥下困難であった.上部消化管透視と内視鏡検査で下部食道の狭窄を認めたが,粘膜病変を認めず,生検でもgroup Iであったため,食道アカラシアと診断し,内視鏡的食道拡張術を施行した.いったんは症状が軽快し退院したが,狭窄症状が増強を認めたため5カ月後再度入院した.食道拡張術を施行したが,嚥下困難が増強し,経食道内視鏡検査で腫瘤性病変が疑われ,再度行った生検で癌と診断されたため外科転科し手術を施行した.左胸腹連続切開で手術を行ったが,術中に明らかな腹腔内リンパ節転移を認め,下部食道および噴門側胃切除,膵尾部脾合併切除を施行した.術後の病理組織学的検査で食道固有腺癌と診断した.術後経過は良好で第28病日に退院したが,術後1年4カ月後に原病死した.

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