2002 年 63 巻 3 号 p. 575-578
症例は58歳,男性.左血性乳頭分泌を主訴に, 2000年5月当院初診した.触診では腫瘤は触知せず,左乳頭より単口性血性分泌を認めた.マンモグラフィで乳頭直下に淡い腫瘤陰影を認めたが,超音波検査では異常を認めなかった.乳管造影にて,拡張乳管内の不整陰影欠損像を認めた.分泌細胞診ではclass III,乳頭分泌CEAは200ng/mlであった.確定診断のためmicrodochectomyを施行.肉眼的に乳管内に約6×6mmの乳頭状腫瘍を認めた.病理診断は,全体では非浸潤性乳管癌であるが被膜のごく一部に微小浸潤がみられ, noninvasive ductal carcinoma with focal microinvasionと結論した.標本上は完全切除であった.患者自身がこれ以上の治療を希望せず,術後1年6カ月の現在まで無再発生存中である.今回の症例は臨床的取り扱いとして非浸潤癌と同様であると考えられ,男性乳癌のなかでも貴重な症例であると思われた.