日本臨床外科学会雑誌
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胃が嵌頓壊死し膿胸を合併した横隔膜ヘルニアの1救命例
鈴木 修川井田 博充小林 正史松川 哲之助
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2002 年 63 巻 6 号 p. 1393-1396

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抄録

症例は64歳,男性で,発症から13日目に左膿胸にて開胸術を施行したが,左肺上下葉間に壊死した胃壁を認め,胃弓隆部が横隔膜ヘルニア嵌頓を起こしていた.胃壁は周囲組織と強固に癒着し,下行大動脈と心嚢への癒着のため完全な剥離は不可能であった.ヘルニア門での閉塞状態が強く胃内容が流出しないため,胃壁を可及的に切除し胃内腔を胸腔内へ解放のまま開窓術を行った.二期手術として8日後に噴門側胃切除とヘルニア門の縫合閉鎖を行った.ヘルニア門は母指頭大で食道裂孔から5cm程離れた外腹側に存在していた.胸腔内の感染が軽快した47日後に三期手術として,膿胸腔の掻爬と筋肉充填による閉鎖を行い, 1回目手術より70日目に退院した.
胃が嵌頓し壊死にまで陥った症例は珍しく,現在までに本邦では4例が報告されている.また本症は横隔膜部分欠損による稀な横隔膜ヘルニアと考えられた.

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