日本臨床外科学会雑誌
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術前CT画像にて疑われた,左傍十二指腸ヘルニアの1例
山口 智弘内藤 弘之遠藤 善裕来見 良誠花澤 一芳谷 徹
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2002 年 63 巻 8 号 p. 1901-1904

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抄録

傍十二指腸ヘルニアはTreitz靱帯周囲の腹部窩に腸管が入り込む内ヘルニアの一つで,本邦では約100例が報告されているにすぎない.症例は14歳の男性で, 1年前より4回の腹痛発作を繰り返していた. 4度目の腹痛発作時,腸閉塞の診断のもとイレウス管を挿入した.腸閉塞は解除されたが,腹痛発作を繰り返すため,診断治療目的で腹腔鏡補助下に手術を行った.左傍十二指腸ヘルニアが認められたため開腹し,ヘルニア内容を還納した後ヘルニア門を閉鎖した.ヘルニア門は脈管環によって締め付けられていた.術前には確定診断できなかったが,腹部CTにて下腸間膜静脈が上方に圧排され,その背側に小腸が嵌入しているなど,特徴的な小腸および血管系の走行異常が確認できた.比較的若年者で,開腹手術の既往がなく,腹痛を繰り返す症例では傍十二指腸ヘルニアの可能性を考慮する必要があり,その診断に造影CTが有効である.

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