2003 年 64 巻 10 号 p. 2431-2434
症例は68歳,男性. 1993年,近医にて腹腔鏡下胆嚢摘出術の既往がある. 1997年1月,発熱と咳嗽を主訴に他院を受診.胸部単純X線上右胸水認め,精査目的に当院内科に紹介入院となった.胸水は滲出性で細菌培養より大腸菌が検出された.原因不明の膿胸として精査を進めたところ, CT, MRIや腹部超音波検査で肝外側の横隔膜内に嚢胞性腫瘤陰影を認めた.
急性膿胸と横隔膜腫瘍の診断で,抗生物質の投与の後,膿胸に対し手術を施行した.手術は二窓法による胸腔鏡下手術で膿胸腔掻破術を施行し,術後は洗浄を行い,炎症反応の沈静化を待って横隔膜腫瘍の切除術を行った.病変は横隔膜下に存在し,肥厚した瘢痕組織に囲まれた膿瘍であり,内部にはビリルビンカルシウム結石を有していた.
腹腔鏡下胆嚢摘出術の際の落下胆石による横隔膜下膿瘍の報告は散見されるが,膿胸にて発症した例は稀なため,若干の文献的考察を加えて報告する.