抄録
症例は49歳,女性.うつ病の既往あり.腹痛を主訴に当院を受診し,腹部X線検査にて合計7本の針状の異物を認めたため消化管異物と診断し同日入院.入院時,消化管穿孔などの所見は認めず,また誤飲後数日が経過しているものと考えられたため,まずは絶食のうえ経過観察とし,その後適宜内視鏡的,手術的異物除去を行う方針とした.入院4日目に下部および上部消化管内視鏡検査, 11日目に下部消化管内視鏡検査を行い合計4本の異物を除去した. 1本は入院4日目に自然排泄された.しかし,残る2本は腸管内に停溜したため,入院17日目に手術的に除去した.本症例において開腹手術は回避できなかったと思われるが,消化管異物症例に遭遇した際は初診時に異物の部位を正確に診断し,鋭的異物であっても内視鏡的に除去可能である場合には積極的に内視鏡的除去術を試みるべきであると考えられた.