2003 年 64 巻 11 号 p. 2821-2824
2年4カ月の経過で腺腫から2型進行癌類似の早期癌へと進展した直腸の側方発育型腫瘍(LST)の1例を経験した.症例は83歳,男性.糖尿病で通院中,鉄欠乏性貧血を認め便潜血検査陽性であったため, 2000年2月に大腸内視鏡検査(以下CF)を施行し,直腸(Ra) LST顆粒結節型を認めた.生検で腺腫であり経過観察した.同年8月に同部LSTに対して内視鏡的粘膜切除(EMR)を施行した. 2001年2月のCFでRaにLSTの再発を認めたが腺腫の診断で経過観察した.同年8月に同部LSTの一部が絨毛状に変化しており部分的EMRを施行した.病理検査でfocally adenocarcinoma in tubulovillous adenomaであり経過観察後, 2002年6月のCFで同部LSTの中に2型様腫瘍を認めた.直腸癌の診断にて低位前方切除術を施行した.病理組織所見はmoderately differentiated adenocarcinoma with tubulovillous adenoma. sm, n0であった. LSTから進行癌への進展を考える上で役立つ症例と思われる.