日本臨床外科学会雑誌
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頸部横切開のみで摘出できた,気管分岐部まで進展した縦隔内甲状腺腫の1例
野田 剛広菰池 佳史元村 和由稲治 英生兒玉 憲小山 博記
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2003 年 64 巻 12 号 p. 2985-2990

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抄録

頸部横切開のみで摘出可能であった,後縦隔の気管分岐部まで進展した縦隔内甲状腺腫の1例を経験したので報告し,当院における15例の手術方法を検討した.症例は51歳の女性,左前頸部腫瘤を主訴に来院した.約10年間経過観察をしていたが呼吸困難を訴え当院入院となった. CTにて後縦隔の気管分岐部まで進展していたが,浸潤傾向は認めず細胞診も陰性であった.手術を施行し頸部横切開のみで腫瘍を摘出した.術後経過は良好で合併症なく退院した.腺腫・腺腫様甲状腺腫12例中, 1984年以降の8例は全例頸部横切開のみで摘出可能であったが,甲状腺癌3例中2例は他臓器への浸潤を認め,胸骨正中切開を付加していた.胸骨正中切開を付加した症例は,有意に出血量が増加し手術時間が延長した.手術において胸骨正中切開を付加する選択基準は定まっていないが,悪性所見がなければ,まずは頸部横切開のみで摘出を試みるべきだと考えられた.

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