抄録
症例は79歳,女性,無症候性右頸部腫瘤を主訴に来院した.画像所見および吸引細胞診より甲状腺乳頭癌,頸部リンパ節転移の診断で手術を施行した.摘出標本の病理組織検査にて甲状腺腫瘍は乳頭癌と診断されたが,頸部の嚢胞性腫瘤は中分化型扁平上皮癌と診断された.この嚢胞は鰓原性嚢胞と考えられる豊富なリンパ濾胞を有しており,嚢胞腔内は扁平上皮で覆われ,正常上皮から癌へ移行する所見を認めた.転移性腫瘍の可能性を考え原発巣を検索したが,頭頸部および上部消化管に明らかな病変を認めなかった.本症例は,鰓性癌の診断基準として広く用いられているMartinの診断基準のうち3つを満たしていることから鰓性癌と甲状腺乳頭癌の重複癌と診断された.甲状腺原発巣が乳頭癌と術前に確診できても,所属リンパ節領域に嚢胞性腫瘤を伴う場合,ただちに転移リンパ節と判断するのでなく,本疾患や他の癌転移病変の可能性も考慮すべきである.