2003 年 64 巻 5 号 p. 1117-1121
今回われわれは,非常に稀と思われる高齢者発症の十二指腸膜様狭窄の1例を経験したので報告する.症例は83歳,女性で,主訴は体重減少・食思不振である.既往歴として慢性関節リュウマチのため8年前から非ステロイド系鎮痛薬を内服している.平成13年9月頃より主訴が出現し始め,時に嘔吐をするようになった.同年11月13日に当院内科を紹介され,精査を行ったところ十二指腸下行脚に全周性狭窄を認めた.保存的治療では通過障害が軽快せず,内視鏡的拡張術も施行困難なため手術を勧められた.開腹したところ十二指腸の瘢痕変形は認めず,狭窄部は十二指腸下行脚に壁外より帯状の壁肥厚として触れた.同部位を長軸方向に縦切開し,切開部より内腔を触診すると下行脚から水平脚に移行する部分付近に少なくとも2カ所の膜様狭窄を触れた.狭窄部の数・年齢および身体活動度を考慮に入れ,手術は胃空腸吻合術を施行した.