日本臨床外科学会雑誌
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膵リンパ上皮嚢胞の1例
橋爪 健太郎西浦 三郎井久保 丹
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2005 年 66 巻 9 号 p. 2281-2286

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抄録

症例は58歳,男性.人間ドツクの腹部超音波検査で膵尾部の病変を指摘された. 4年前に上腹部不快感の既往があったが,腹部CTでは異常を認めなかった.今回,入院時CTで膵尾部に径4.5cmで嚢胞壁に淡い造影効果を認める嚢胞性病変を認めた.腹腔動脈造影では脾動脈の壁不整像と嚢胞壁に濃染像を認めた.血清CA19-9値の著明な上昇も認め,悪性の嚢胞性腫瘍の可能性を考慮し,膵体尾部切除を行った.肉眼的には腫瘍は厚い被膜で覆われ,内腔には角化物質が充満していた.病理検索では嚢胞内壁は重層扁平上皮に覆われ,周囲にリンパ組織の増生を認め,膵リンパ上皮嚢胞と診断された.本症例は4年という比較的短期間に発生,増大し,血清CA19-9値の高度上昇などの臨床所見および悪性を疑う画像所見を認め手術を行った.膵リンパ上皮嚢胞は稀な良性疾患であるが,悪性の膵嚢胞性腫瘍との鑑別が困難である場合は切除することが望ましい.

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