症例は34歳,女性.平成15年8月ごろより左下腹部の腫瘤を自覚していた.平成16年2月近医を受診し腹部CTにて左後腹膜腫瘍を指摘され,当科紹介となった.初診時,左下腹部に弾性軟な5×3cm大の腫瘤を触知した.腹部CTでは左後腹膜腔に5×3cmの造影効果の乏しいlow densityな腫瘤を認め, S状結腸が内側に圧排されていた.後腹膜嚢腫の診断のもと,腫瘍摘出術を施行した.腫瘤は薄い嚢胞壁を有し,周囲への浸潤は認めなかった.内腔には淡黄色透明の漿液が充満していた.内容液のCA19-9およびCEAはそれぞれ1,087, 100U/mlおよび53.5ng/mlと高値を示した.細胞診はClassIで,嚢胞壁に悪性所見を認めなかった.免疫組織化学染色を行ったところCA19-9のみ陽性であった.術後経過は良好で第7病日に軽快退院となった.