2006 年 67 巻 10 号 p. 2301-2305
稀な乳腺cystic hypersecretory carcinomaの1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.左乳房腫瘤のため前医を受診し,穿刺吸引細胞診で腺癌と診断され,当院を紹介された.左乳房外上領域に径1.5cmの腫瘤を認め,マンモグラフィでは多形性不均一の領域性石灰化を認めた.超音波検査では嚢胞の集籏を思わせる腫瘤像を認めた.乳房切除および腋窩リンパ節摘出を行った.病理組織学的には大小多くの嚢胞が密在し,その内部には好酸性の分泌物が充満していた.嚢胞の上皮には低乳頭状に増殖する癌を認め,一部には浸潤癌巣が存在した.標本上腫瘍の最大径は6cmであり,最終的にはcystic hypersecretory carcinoma with minimally invasionと診断された. Estrogenreceptor, Progesterone receptorとも陰性で腋窩リンパ節に転移はみられなかった.症例は術後16カ月を経過した現在再発を認めていない.